ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
情緒のカタルシスに音楽が有効である――と、音楽の効用を説いたのは、ギリシャの哲学者アリストテレスです。また、古代エジプト人は音楽を「魂のクスリ」とよんでいたと言います。そして今、ストレスを解消し、免疫力を高めるなど、音楽の幅広い効能が心と体のセラピーとして注目を集めています。
現代の日本では、音楽は個人的な趣味・嗜好の問題となり、音楽本来の持つ深い、神秘的ともいえる効用は忘れられがちです。そこでまず、音楽の持つさまざまな力、頭脳や精神に与えるプラスの効果をトーリン・クロソウスキ氏の記事からご紹介します。
目次
🔴忘れていたことを思い出す
私たちは、知っている音楽を聴くと長期記憶を司る脳の海馬が刺激されます。そして、かつてその曲を聴いたときに体験したことなど、関係のある記憶が引き出されるのです。ということは、音楽を聴きながら新しい記憶ができると、その後同じ音楽を聴くことで、その記憶が引き出されることがある、ということが言えます。もし、何か暗記しなければいけないことがあるのになかなか覚えられない場合は、最初に覚えようとしたときに聴いていた音楽があれば、それを聴き続けるとうまくいくかもしれません。
🔴免疫力を高める
音楽を聴くだけで免疫力が高まるなんてウソのような話ですが、ちゃんと科学的に証明されています。癒しの音楽は、ストレスを軽減し、そのときにストレスホルモンのコルチゾールの値が下がります。これは癒しの音楽だけでなく、テンポのいいダンスミュージックでも体内の抗体のレベルが上がることがわかっています。
音楽が免疫力に及ぼす影響について最近発表をしたロニー・エンク博士は、「音楽を聴いて気分が良くなると、生理学的な変化が起こり、ストレスの軽減や免疫力アップにつながる」と説明しています。
音楽が免疫力アップに役に立つということは、頭の片隅においておくといいですね。ストレスを感じたとき、風邪をひきそうな感じがしたときは、音楽を聴くといいかもしれません。
🔴エクササイズのときに
運動をするときに音楽を聴くとプラスに働くことがわかっています。最近の調査では、テンポの速い音楽がエクササイズにとくに効果的だと発表されました。これは特に驚くような結果ではありませんが、研究では、音楽がエクササイズによる疲労から気をそらしてくれるので、より心拍数を上げて筋肉を動かすことができるとしています。そこでの音楽の具体的な役割はまだわかっていないものの、音楽を聴きながらエクササイズをすると、より激しいトレーニングに耐えられるということのようです。
この際、最も効果的なテンポは1分間に120~140ビートだとか。これは、一般的なアップビートのダンスミュージックの速さです。このテンポの曲に合わせてエクササイズすれば、免疫力をアップさせつつ、音楽がない場合よりも負荷の高い運動ができます。
🔴プレッシャーに負けない
ハミングすると不安な気持ちが抑えられるとのことですが、これはプレッシャー対策にも使えるようです。フリースローで失敗しやすいバスケットボールの選手を対象とした調査で、選手にキャッチーでアップビートな曲を聴かせてみると、成功率が上がったとか。モンティ・パイソンの『Always Look on the Bright Side of Life』を選手に聴かせたところ、前頭前皮質をあまり使うことなく、リラックスした状態でフリースローをすることができました。
あなたが心配性で大事なミーティングやプレゼンでアガってしまうタイプであれば、力を抜いて聴くことのできる、ユーモラスな曲を聴きながら心の準備をすると、失敗を防げるかもしれません。上記のモンティ・パイソンの「いつも人生の明るい方を見よう」はいい例ですが、あなた自身が好きな軽い曲調の音楽なら、同様の効果が期待できます。
🔴疲れに打ち克ち、生産性を上げる
音楽が生産性を上げると結論づけるに足りる研究結果は、まだそろっていませんが、歌詞のない曲は、脳の言語を扱う分野を邪魔しないことはわかっています。理論としてはエクササイズの場合と同じで、テンポの速い音楽は脳の動きを助けるようです。
もし、あなたの毎日が単調ならば、音楽を聴くことで気分を高揚させつつ、退屈な仕事をこなす、といったことができます。エクササイズも同じで、音楽の種類を変えることで、疲れを感じにくくなります。また、どのような種類の音楽を聴いてもドーパミンは分泌されるので、ムードを高揚させることが可能、という研究もあります。疲れたとき、飽きてきたとき、気分が沈みがちなときは、まず、お気に入りの音楽を聴いてみてください。
🔴セルフ音楽療法
最近の研究では聴きたい音楽であれば、どんな音楽でも体の緊張が解け、皮膚温が上昇し、筋の緊張度が低下すると報告されています。たとえヘビーメタルのロックでも、あなた自身がその曲が好きで、曲を聴くことで疲れを忘れ、嫌な気分が薄らぐのなら、それもストレス解消によく効く音楽なのです。ただし、どんな名曲でも、音楽に興味のない人が「ストレス解消のため」と無理に聴くのでは、かえって逆効果になりかねないので注意が必要です。
リラクゼーションや脳の活性化にはボーカルが入っていない音楽がよかったのに対し、心のダメージを和らげるには、「純粋の音楽」プラス「言葉の力」があったほうがよいようです。
カラオケも、思い切って息を吐き声を出すといった効果と共に、その時の気分にあった選曲をして、思い入れたっぷりに歌うことで、ストレス解消には大きな意味があるといえます。
セルフ音楽療法の極意は、さまざまに落ち込んだ気分を立て直すための曲のレパートリーをどれだけ用意し、いかに「症状」に合わせて適切に選ぶかにあります。ストレスから自分の心と体の健康を守るために、音楽鑑賞という自分の趣味を生かした「セルフ音楽療法」をぜひおすすめします。
ストレスを感じたら、その日のうちに「気晴らし」をする習慣をもちましょう。エゴレジ力もアップします。
よく知られているのは、ウォーキングやジョギング、ダンス、ストレッチ体操などの「運動系」ですが、好きな音楽を聴いたり、カラオケで歌を唄う「音楽系」も有効です。セルフ音楽療法を試してみませんか?
その日のうちに気晴らしをして、ストレスやネガティブな感情を次の日に持ち越さないことが肝要です。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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