《健康》「社会的つながり」が大事!

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

世界中の人が、新型コロナ感染症の感染リスクにさらされ、孤立・隔離された生活を強いられ、自粛することで窮屈な毎日を送っています。人間の経済活動のほとんどは、他者とのつながりがなければ不可能です。社会的なつながりがなくなると精神・身体の健康に大きな悪影響が生じます。新型コロナ感染症の弊害は様々なところに出てきますが、私たちにとって最も厄介なのは、この社会的なつながりを希薄にせざるを得ないことでしょう。今回は「社会的つながり」についてのお話です。

🔴WHOの言い換え

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために東京都の小池百合子知事が呼び掛けた「ステイホーム週間」が始まりまっています。感染抑止では、人と人の間に十分な距離を保つ「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)」が重要とされますが、最近これを「フィジカル・ディスタンシング(物理的距離の確保)」と言い換える動きが出てきました。

きっかけは世界保健機関(WHO)が最近「フィジカル・ディスタンシング」という言い方に改めたことです。フィジカルは「物理的」という意味。社会的距離という表現だと「愛する人や家族との関係を社会的に断たなければならない」と誤解されかねず、あくまで物理的な距離を置くだけだと伝える狙いです。WHOの専門家は「人と人とのつながりは保ってほしいと願うから」と解説しています。

🔴「社会的つながり」

WHOは、保健当局が感染拡大を封じ込めるために物理的に人と接触する頻度の制限を勧めている場合でも、電子メール、ソーシャルメディア、ビデオ会議、電話を介して人とのつながりを維持できるとしています。感染拡大でストレスや孤立を感じがちな時には、とくに人とのつながりで、体と心の健康を維持することが重要です。

WHO神戸センターで翻訳を手がける健康危機管理担当の茅野龍馬医官は「人と人との物理的な距離を維持することは感染予防のために極めて重要であるが、心理社会的な健康(精神的健康)のために、社会的孤立を避け、SNSや電話などさまざまな手段で人と人とのつながりを維持することが推奨されている」と話しています。

🔴他者とバーチャルでつながろう

隔離や社会的接触の減少に心身ともに適応するため、他者とのバーチャルなつながりを保つことを推奨しているのは、ブリガム・ヤング大学の心理学教授ジュリアン・ホルトランスタッド氏です。FaceTimeやSkypeといったツールが「ウィルスへの感染リスクに自分たちの身をさらすことなしに人とのつながりを感じ、結びつきを維持することを可能にし、こうした短期的な不快な状態を緩和する助けになるかもしれない」と、ホルトランスタッド氏は述べています。同氏は、積極的に他者と連絡を取り、彼らがどうしているか尋ねることを勧めています。そうすることで、自分だけでなく、相手のメンタルヘルスも向上させられるからです。

サポートがあるという認識が得られるだけでもストレス軽減になることを研究は示しています。ホルトランスタッド氏は、外の世界との接触が減ることのメリット —— 普段よりゆったりと時間を過ごしたり、——番身近な人たちと過ごすことができる ——こともあると話しています。「さまざまな方法であなたへの愛やサポートを示してくれる人がいると、こうした比較的自由の制限された状態も我慢しやすくなる」のだそうです。

SNSで,同じような隔離状況に置かれた人々同士で話し合い,互いに助け合うためのグループを作るのもよいでしょう。

🔴相談できる人の存在

家庭、隣近所、学校や職場などでの日常的なやり取りや、災害などの有事における情報発信・情報収集において、人と「つながること」や人だけでなく情報などへの「つながりやすさ」は助けを求めたりする上で欠かせません。しかし、実際に助けを求められる相手がいるかと問われたとき、あなたは具体的な人物を思い浮かべることはできるでしょうか。

悩みを聞いてくれたり、アドバイスをしてくれたり、具体的な手段によって助けてくれるといった、自分の周囲の人からの有形無形の援助は「ソーシャルサポート(社会的な支援)」と呼ばれ、こうした人間関係は心身の健康にも影響を与えると言われています。

第一生命経済研究所が2019年1月に実施した「今後の生活に関するアンケート」では、ソーシャルサポートを「情緒的つながり」(共感や傾聴などを通して相談にのったり、励ましてくれる人)、「手段・道具的つながり」(形あるものやサービスを提供してくれる人)、「助言・情報的つながり‘(問題の解決に必要なアドバイスや情報をくれる人)、「評価的つながり」(相手の能力や努力を評価してくれる人)の4つに分類して、それぞれに該当する人は誰かを尋ねました。

その結果、男女ともに「母親」と「配偶者」が高い傾向にありましたが、女性は母親、配偶者だけでなく、「子ども」「兄弟姉妹」そして「友人知人」となど多方面に支援をしてくれる相手がいることがわかりました。

一方、男性は、母親と配偶者といった身近な異性の親族以外に支援者がいると認識する割合が低い傾向があったのです。

人とのつきあいは、いつも心地よいとは限りません。ときに不快な思いをすることもありますが、やりとりの積み重ねによってお互いの信頼が生まれ、関係が築かれていきます。今は具体的な助けが必要ないとしても、長い人生でつき合い続けられそうな仲間はいるか、新たなつながりをつくるとしたらどうするか考えてみることも必要でしょう。

直接会うことができなくても、今や電話やメールだけでなく、SNS、そしてテレビ会議・Web会議システムなど、スマートフォンやPCがあってインターネットに接続できれば、簡単にやり取りができるツールが多数用意されています。手紙や葉書も忘れてはなりません。

エゴレジ力を発揮して、これらのツールをうまく活用しながら、信頼できる人たちと連絡を取り社会的なつながりを維持すること、そして日々変化する状況にも精神的な不調に陥らないよう、意識的になることが大切です。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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