他人と比べることは是か非か

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

なぜ、他人と比べるのでしょうか。比較することで何が得られるかというと、比較対象と自分の「違い」つまり「差」がわかります。この「差」を憧れとして、自分のモチベーションにできるといいのですが、嫉妬心や劣等感が上回ってしまうと、気持ちが落ち込みます。そこで今回は、そんな他人と比べる心理についてのお話です。

なぜ他人と比べるのか「社会的比較理論」

誰もが無意識のうちに行なっている「自分と他人を比べる」ということに関して、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが1954年に提唱した理論です。

人は自分の能力や思考、容姿、態度などをできるだけ正しく把握したいと思うため、自分と周囲の人とを比較することで、社会における自分の位置を確かめようとする傾向にある

社会的比較理論は、自己評価を正確に把握するために焦点を当てています。人は、自分の能力や態度を客観的な評価基準が見つからない場合、他者と比較することで自己評価を行います。この比較過程を「社会的比較」と呼びます。
具体的には、以下の2種類の社会的比較があります。

◆上方比較(Upward Comparison)
自分よりも能力の高い人と比較することで、向上させる意欲を高める利点がありますが、自己評価を低下させるリスクも含まれます。
◆下方比較(Downward Comparison)
自分よりも不幸であったり優れていない人々と比較することで、自分はマシだと自信を維持することができます。ただし、この考え方を続けることは危険です。

どちらの比較を行いやすいのかは、その人の精神状態に左右されます。
自信があり、向上心の強い人は上方比較をする傾向が強く、逆に自信や向上心が低下している人は下方比較をする傾向が強いといいます。
2つの比較手段のどちらがいいのかは、簡単に結論を出すことはできません。

上方比較は確かに向上心を刺激するかもしれませんが、あまりにも上の立場の人と比較してしまうと、落ち込んでしまうこともあります。
下方比較も気持ちやプライドがかなり落ち込んだ時に、あえて積極的に行うことで、精神状態を安定させることができます。
バランスを保つために、理想的な比較は、自己評価を向上させつつ、過度な自己評価を防ぐことです。

他人と比べるメリットとデメリット

他人と比較することは決して悪いことではありません。比較をすることで起こるメリットはもちろんあります。しかし、比較した結果、自分にとってデメリットとなるケースも存在します。比較によるメリット・デメリットについて理解を深め、沸き起こった感情に対し、適切に向き合えるようにしていきましょう。

◆他人と比べることのメリット
他者との比較はどうしても悪いことなのではないかと感じがちですが、そんなことはありません。比較をすることで、初めて見えてくるものや次への原動力になることもあります。

現状に満足せず、高みを目指せる
他者と比較をすることで、現状の自分の立ち位置は明確になります。
比較するものはなんでも構いません。成績や業績の単純な成績や収入に限らず、最近ではSNSなどのフォロワー数も一つの指標になると思います。
数字や結果が目に見える形で出てくるものは比較が容易です。そのため、上にいるのはどういった人なのか知ることも楽になります。何をしたら、もう一段上にいくことができるのか。今の自分の取り組みに加えることのできるものはないか。他者との比較をすることで、現状打破についての考察が客観的にできるようになり、さらに高みニチェレンジすることができるようになるのです。

自分が求めているものに気づくチャンスになる
比較の対象の「他人」を将来の自分に置き換えることで、自分が今理想としているものや、求めているものが明確になります。
他人ではなく、あくまで将来の自分自身が比較対象になるので、嫉妬や劣等感を感じることはないのではないでしょうか。理想を想像することで、自分の本当の願望や手にしたい物を認識するようになり、努力のモチベーションも保つことができます。考えられる可能性として、現在の努力の方向と、願望の方向が少しズレていることに気づくこともできるかもしれません。理想が明確になるからこそ、取り組む事も明確になっていきます。「未来の自分」との比較をすることは、ある意味有意義なことであるといえるでしょう。

◆他人と比べることのデメリット
イメージで思い浮かぶこともあるかと思いますが、具体的な言葉にし、対応や処理方法を整理していきましょう。

変えられないことに悩む恐れがある
容姿や財力といったすぐには変えられないものを他人と比較をしても、解決する手段は非常に少なく、簡単ではありません。答えや解決策を考えたとしても、ハードルは高く、どうにもならないケースも多いでしょう。「どうにもならない」とわかっていることでも他人と比較をしてしまうことで、気分が落ち込んだりしてしまう可能性があります。長期間、どうにもならないことで悩み続けてしまうと、「自分はダメなんだ」と毎日暗い気分で過ごすのが当たり前になってしまいます。また、どうにもならないことに悩み続けてしまう時間も浪費してしまいます。仮に他人との比較で一時落ち込むことがあっても、「他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来」と気づけば、悩むことの意味も変わってくるかもしれません。変えることのできる「自分」と「未来」をどうするか、考えていくこと。その方が何倍も合理的で有益です。

幸せが長続きしない
他人との比較で一時的に私たちは幸せや充実感を得ることはできるでしょう。しかし、多くの専門家の研究によって、お金や物、容姿などの他人との比較で得ることのできた幸せは長続きしないことがわかってきました。
他人との比較による幸せが長続きない理由は至ってシンプルで、上には上がいるからです。自分の評価軸になっている項目全てにおいて、誰よりも1番になることは現実的には不可能です。幸せのよりどころを社会的な立ち位置にしてしまうと、自分よりも上が見えてしまう以上、幸せを感じることは一時だけでしょう。
幸せを続けるためには、ありのままの自分を受け入れることが大切になります。ありのままの自分を受け入れることができないと、他人との比較でしか自分を認めることができなくなってしまいます。自分自身を認めることが幸せにつながっていくのです。
次に大切になるのは「なんとかなる」と切り替えることです。ネガティブに考えて行動を起こせない人と、何かあってもなんとかなると切り替えることができる人とではどちらが幸せでしょうか。チャレンジを繰り返し、成功体験を積んでいくことはその後の人生を豊かにしていくためにも必要になることでしょう。

以上、エゴレジ研究所から他人と比べる心理についてご紹介しました。私たち人間は他人と比較することを完全にしないようにするのは難しいようです。他人と比べることは決して悪いことではないということを頭の片隅に置いておくだけでも気分は楽になるのではないでしょうか。また、上方比較や下方比較をその時の自分の状態に合わせながら行うことは、その後のモチベーション維持につなげることもできます。自分を下げるような比較ばかりにならないよう、比較の仕方や対象をうまくコントロールし、過度に落ち込むことをなくしていきましょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP