スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
怒られたとき、失敗したとき、家族や友達とけんかをしたとき…さまざまな理由で「落ち込む」経験は誰しもあるものです。そうした出来事があったとき、「落ち込みやすい人」と「ほとんど落ち込まない人」がいます。そこで今回は、「落ち込んだとき」についてとりあげてみました。
「落ち込みやすい人」と「あまり落ち込まない人」
カウンセリングスペース「フィールマインド」代表の小日向るり子さんによれば、
「落ち込む」とは「ネガティブなストレスが加わったときに陥る一時的な憂うつ感情」のこと。そして、「落ち込みやすい人」と「落ち込みにくい人」の違いは、起こった出来事そのものの違いではなく、認知の仕方(どう受け止めるか)の違いだと説明されています。
落ち込む時間が長い人の場合、「失敗=自分自身の否定」と捉え、失敗が自身の全否定と考える人が多く、
比較的短期間で失敗から立ち直る人は、「失敗=自分の行動(選択)」と、行動などの部分否定であり、自分自身の全否定にはならないのです。
失敗を自分自身の否定と感じる(考える)人は、自己肯定感が低い傾向にあり、自己否定に陥りどんどん気持ちが下降していってしまうようです。自己否定が続くと、最悪、鬱状態になってしまいます。失敗→自己否定→鬱状態(最悪のケース)という流れに陥ってしまうのです。
一方、失敗を自分の行動の選択ミスと捉えている人たちは、自分の失敗を反省はするものの、ひどく落ち込み続けたりはしません。失敗→反省→改善という流れになり、次への行動へ移ることが早いのです。次への行動が早いということは、仕事でも人間関係でもチャンスが多くなるということです。
また、明治学院大学心理学部教授の伊藤拓先生は、ストレスを受けたあとの心理メカニズムについて「認知・感情・行動・身体はお互いに作用し合う」と話されています。
たとえば「プレゼンを失敗した」などストレスフルな出来事があったとき、私たちのなかには
「しまった、まずい」といったネガティブな【認知】が生じ、
「憂うつ」などの【感情】が生まれるそうです。それから
「考え込む」といった【行動】を起こすことにより、ネガティブな認知と感情がよりいっそう強まるのだとか。
すると「自分はダメ人間だ、もう終わりだ」などとエスカレートしたり、
「胃痛、動悸」といった【身体症状】が生じたりするため、さらにネガティブな感情が強くなり、重症化していくそうです。
ネガティブな認知とどう付き合うかが重症化予防のポイントだと伝えています。
落ち込んだときに効果的な方法
人が落ち込む程度は、受け止め方(認知の仕方)によるとわかりました。それをふまえ、STUDY HACKERに掲載された「落ち込んだときに効果的な方法」を5つご紹介します。
1.次に何をすべきか自分に尋ねる
カウンセラーのハイジ・リゴウリ(Heidi Francine Ligouri)氏は、気分が落ち込んだときは、次に何をすべきか自分に尋ね、とにかくそれを実行するようすすめています。落ち込んだままにせず、次のステップを見つけてとにかく進むためです。
それが、たとえば「同僚を手伝う」「明日の確認をする」「水を1杯飲む」「まずはトイレに行く」「空を見上げる」など、どんなに単純なことであっても、迷わずそれに専心するといいそう。
2.言語化して認知を変える
前出のカウンセラー小日向さんは、落ち込みにくい人になれるよう、自分が物事をどう受け止め、どんなことを心地いいと感じるのか自己分析をするようすすめています。
起こった「1. ストレスフルな出来事」を書き
→「2. そのとき自分はどう受け止めたか」を書き
→それがネガティブな内容であれば「3. どう受け止めたら気持ちが上向きになるか」を書き出してみるといいそうです。
なんでも書き出す(言語化する)ことで自分の感情を客観的に整理でき、ネガティブに傾いた認知を変えやすくなるようです。
3.リカバリーする
もうひとつ、小日向さんが「落ち込んだときの回復を早めるため」にすすめるのはリカバリー術=「趣味や気晴らしの実践」です。
仕事関係のコミュニケーションには左脳を使うことが多いので、右脳を使う運動や芸術系の趣味がおすすめとのこと。左脳と右脳をバランスよく使うことで、ストレスが軽減するそうです。
4.失敗を学びに変える
12万部を超えるベストセラーシリーズの『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社、小学館文庫)の著者である俣野成敏氏は、落ち込む原因となった失敗について反省して自分を責めてばかりいるより、頭を切り替えて失敗を次に活かすようアドバイスしています。
具体的なプロセスは次のとおり。
- 失敗を認めて受け入れ、気持ちを切り替える
- 「どうすれば同じ失敗をしないか」考え、教訓を得る
- 次の行動にその教訓を取り入れる
現実的には、1と2は頭の中の作業になりますが、特に最初のうちは、意識的に自分の気持ちを切り替えるようにするといいでしょう。
教訓を得るために「時間を戻せたら今度はどう行動するか?」と自分に問いかけ、得た教訓はメモしておくといいそうです。
誰でも失敗はしますので、失敗してしまったと感じた場合は、その事実を受け入れること。多くの人が失敗を引きずってしまうのは、人間がすぐには気持ちの切り替えができないことを物語っています。そこをふっ切るためには、「一度終わらせる」作業が必要になります。それが「失敗を認める」ということです。
5.深呼吸する
ホリスティックヘルスの専門家で『The Clarity Cleanse』の著者であるハビブ・サデギ(Habib Sadeghi)氏によれば、大きく深い腹式呼吸を行なうことにより、副交感神経を活性化できるとのこと。 副交感神経は、心拍数や血圧を低下させる休息の自律神経です。
まずは、肺から強制的に空気を吐き出します。これを1~2秒続けたあと、お腹を膨らませながら深く吸い込むといいそうです。7つまで数えて吸い込み、さらに7つ数えるあいだ息を止め、それからゆっくり目を閉じた状態で、約14秒間ほどで吐き出す呼吸を繰り返すとのこと。実際にやってみると、1サイクル行なうだけでも効果を感じます。
副交感神経を活性化させ、気持ちを落ち着かせるこの深呼吸エクササイズは、「自分の考え方・感じ方を変えるためのちょっとした方法になりうる」とサデギ氏は説明しています。
以上、エゴレジ研究所から「落ち込んだとき」についてご紹介しました。落ち込みやすい人は繊細で優しく、物事を真正面から受け止める真面目な人が多いようです。しかし、その繊細さと優しさは、まず自分のために使うべきです。心で誰に何を思おうと自由ですし、楽しみも他人に迷惑をかけるものでなければ何をしてもよいのです。まず、それを念頭に置いて、自分が傷つかない認知の仕方と心地よい気分転換を見つけてください。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
|
GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
この記事へのコメントはありません。