代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
最近、不機嫌になっている人が多いような気がしませんか。新型コロナウイルスの感染拡大で人々の生活に様々な変化が起きていて、その傾向はさらにひどくなっているように見受けられます。実際、現代社会は「怒り」の種がいっぱいです。電車に乗れば乗ったで、会社に行けば行ったで、心にはなにがしかの波風が生じます。不満、怒り、不快、イライラ……心はしょっちゅうイラ立っています。しかし、そうした不機嫌が続くと免疫機能が低下するらしいのです。そこで今回は、怒りと免疫の関係についてのお話です。
怒りと免疫力の研究
怒りは、自己防衛の手段として怒ることが大切な場合もありますが、基本的に怒りは体に悪いものです。ストレスや不安に直結しやすい高血圧や血行不良、頭痛などの症状を引き起こすとされる科学的なデータがたくさんあります。そのなかでも面白い研究を一つ紹介します。
ロンドン大学のレインらは、怒ると6時間以上免疫力が下がるという研究結果を示しています。さらに、その研究では、他者へのいたわり、慈しみといった感情を抱くと、24時間以上免疫力が高まるとのこと。 |
人に優しくする感情はプラス効果があるのに対し、怒りはマイナス効果になるというわけです。
怒りと免疫細胞
多くの研究から『笑い』が免疫細胞であるNK細胞を活性化して、NK細胞ががん細胞を攻撃し、がんを予防できることは既に一般的にも知られています。
では『笑い』の反対の感情である『怒り』は免疫細胞であるNK細胞にどのように影響するのでしょうか?
怒るとストレスが高まりガンやその他の様々な病気を発症しやすくなります。
『病は気から』というのは昔から言い伝えられてきた言葉ですが、ヒトは心理的ストレスによって病気が生じることを経験的に知っていました。その作用機序はこれまでの多くの研究によって自律神経、内分泌系、免疫系と心理的因子の相互関与するものであることがかなり明らかとなってきています。
心理的ストレス、『怒り』『不安』『恐怖』『悲しみ』などの感情が持続すると、自律神経が不安定になります。自律神経は交感神経と副交感神経がありますが、怒ると交感神経が優位になってきます。交感神経が活発になると血圧をあげるように身体に指令が出され血圧の上昇に伴って血管は損傷を受け、血液は心臓や脳に運ばれにくくなってきます。実際に、怒りやすい人の心筋梗塞の発症率は普通の人の5倍、脳梗塞は2倍という研究結果もあります。
怒ってストレスが発生し、自律神経が不安定になると、内分泌物質によって免疫系の障害も引き起こします。副腎皮質から抗ストレスホルモンである『コルチゾール』が分泌します。『コルチゾール』はNK細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導し、NK細胞の活性も減少します。また、怒るだけでなく、悲しみやさまざまなストレスによっても『コルチゾール』は発生しますので、日常のストレスを無くすのが最大の病気予防といえるのです。
アンガーマネジメント
このように怒りは万病の元です。人は誰でも怒りの感情を多かれ少なかれ持っています。怒りを抑えすぎるのも逆にストレスとなり良くありません。そこで注目されているのが『アンガーマネージメント』です。
アンガーマネジメントとは「怒りの感情と上手に付き合うためのトレーニング」のこと。怒りというネガティブな感情をうまくコントロールして、感情を癒したり、ポジティブな方向に持っていけるようにするための手法です。
日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏によれば、
「怒り」の感情は、マイナスの部分だけでなく、実は、物事をプラスに好転させるきっかけになる可能性もあります。そのキーワードとなるのが、「アンガーマネジメント」という考え方です。アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手に付き合うためのトレーニングのこと。』「怒らなくなる」ことを目的にするのではなく、「怒りの感情とうまく折り合いをつけていくための考え方の習慣付け」であり、アンガーマネジメントを学ぶことで、自分の怒りを理解し、怒りの感情とうまくつきあい、ポジティブな考えを生みだすことにつなげようというものです。
怒りは感じてもいいのです。『怒らなくてもいいことは怒らない』『怒る場合も表現方法や場所を選ぶ』といった怒りのマネジメントが必要なのです。
ここでは3つ、日本アンガーマネージメント協会が提唱している内容を少し分りやすく改変してみました。
- 6秒数える・・・・感情をいきなり出さず上手にブレーキをかける
- 怒りの日記・・・・怒りを感じた時にその場で書きとめ、後で読み返し客観的にみる
- 笑顔を作る・・・・笑うときでなくても口角を上げ笑顔で話す
また、NK細胞の活性化には適度な運動も効果的であることが分っています。運動習慣のある人はない人に比べ、NK細胞活性が高いことが明らかになっています。テニスやウォーキングなど、日頃から有酸素運動を心がけましょう。
さらに、そもそも「イライラしない」状態をキープすることが本質的な解決につながるとして「ブドウ糖と明記されているラムネを食べる」ことを推奨されている先生方もいます。
『科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全』の著者である、堀田秀吾先生(明治大学法学部教授)と木島 豪先生(東京メディカルクリニック平和台駅前院 院長)です。両先生は次のように説明されています。
オハイオ州立大学のブッシュマンらによる研究で、人間は血糖値が低くなるとイライラしやすくなることがわかっています。ですが、イライラしないように血糖値を高める糖分の多いお菓子を食べると、ついつい食べすぎてしまって、体重が増えるなどのデメリットがメリットを上回ってしまう可能性も否定できません。
そこでおすすめなのがラムネです。
ポイントは、砂糖原料ではなく、ブドウ糖と明記されているラムネを選ぶこと。
なぜブドウ糖がいいかというと、効率的に脳のエネルギーに変換されるうえに、血糖値を上げることができるからです。
砂糖原料のお菓子を食べても脳のエネルギーにはなりますが、脳が実際に使っているのは砂糖を構成しているブドウ糖だけで、果糖はエネルギーになりません。ブドウ糖原料のラムネなら、糖の最小単位であるブドウ糖だけを摂れるので吸収効率がいいうえに、脂肪分もありません。実際に、ラムネの効果は研究で科学的に実証されています。
ラムネは食べすぎてもデメリットがあまりないので、定期的に摂取するのがおすすめです。「甘いものを食べたいのは体が欲しているから」とよくいうように、実際に甘いものに含まれている成分は生命維持に必須です。
脳は1時間あたり、4~5gのブドウ糖を必要するといわれています。ラムネは一本あたり約29g入っていて、26g前後のブドウ糖が摂取できると考えられます。これを摂取量の目安にしてみてください。くれぐれも食べすぎにはご注意を!
以上、エゴレジ研究所から、怒りと免疫の関係についてご紹介しました。日々、穏やかに過ごすためには「感情的にならない」技術が必要になってきます。怒りは万病の元だからと、怒ることを無理にやめようとしたり、怒ってしまった自分を責めたりするのではなくて、上手に付き合っていくことが大切なようです。怒りを自分でコントロールができるようになると、日常生活のストレスやトラブルも軽減できます。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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