第3回 サステナブル・ライフスタイルと選択の基準のヒント

こんにちは。サステナビリティ・アドバイザー、日本サステナブル・ラベル協会 代表理事の山口真奈美です。第1回ではサステナブルとは何か?という基本的なお話や日常の生活からイメージできる視点、第2回ではサステナブル・ライフスタイルに向けた、選択の基準のヒントとして、衣食住の中から、衣の繊維製品やアパレルにかかわるサステナビリティについて、ご紹介してきました。今回はより身近なアクションや調査結果から見える世界と日本との違いについてなどをご紹介して参りましょう。

サステナブル・ライフスタイルってどんなこと?

最近時々特集などで見ることが出来る、SDGsの紹介や、サステナブル・ライフスタイルの提案は様々な方法があります。普段通りに生活していると、見えづらいかも知れませんが、知らず知らずのうちに、自然や環境に悪影響を及ぼしてしまっていたり、人権課題につながるような事例があることを1,2回目のコラムではお伝えしてきました。一方、日々「環境を壊したい!人々が辛い思いをすればいいのに。」などと思いながら生活しているわけではないですよね。むしろ、誰もが幸せで平和な社会であってほしいと願う方の方が多いかと思います。

エコ活動に近い?!サステナブルアクション

カグジョ世代が子供のころから知っているであろう、エコという言葉。そして、エコ活動として、「ごみを増やさない」「リサイクルなどモノを大切に使う」「電気をこまめに消す」「エネルギーを無駄にしない」「買い物の時はエコバックを使用」などなど、日常でできる活動は昔から大きく変わっていないことにお気づきでしょう。
どうして今、エコからサステナブルになっているの?同じでは?と思われるかも知れません。根底には同じように、自然や環境、私たちの暮らす世界が持続的に続いていくために、環境活動・エコは切っても切り離せない点があります。
では、サステナブル・ライフスタイルってそもそも何?と疑問符が出てしまいますよね。電通が行っている調査結果を見てみるとおもしろい結果が見えてきます。

サステナブル・ライフスタイル調査報告から見える違い

世界6カ国(日本、中国、フランス、ドイツ、インドネシア、タイ)、18〜69歳の6000人(各国1000人)を対象に行われた、「サステナブル・ライフスタイル意識調査2023」(電通、電通総研)を見てみましょう。
まず、サステナビリティのイメージですが、先ほどのエコ活動からも繋がっているとも言えますが、6か国ともに廃棄物の削減に関わる「一般市民がごみを減らすこと」または「企業が廃棄物を減らすこと」が上位となっています。
また、インドネシアやタイでは、「一般市民が環境・社会を考え、モノの選び方や生活を変えること」が上位であり、ごみや廃棄物を減らすとともに、選択場面においてサステナブルな視点が重要視されていることがうかがえます。

出典:サステナブル・ライフスタイル・レポート2023.pdf

気候変動の影響も関係?!

それから、調査結果では、一見身近に感じづらいかも知れない気候変動ですが、
「食と水の安全」・・・84.2%
「生活コスト」 ・・・84%
と、気候変動の影響を受けていると考える人は世界6カ国で8割以上という結果が出ています。

そして、気候変動の影響を受けていると思う領域にもあるように、ビジネスの行い方から、自分の仕事や経済的不安定、自分のメンタルヘルスにも関係しています。


出典:サステナブル・ライフスタイル・レポート2023.pdf

サステナビリティについて考える頻度

また、「直近3年間でサステナビリティについて考える頻度が増えた」と思う人は、中国・インドネシア・タイで、8割以上、フランス・ドイツが6割を超えているのに対し、日本では約4割、「変わらない」回答した人が過半数という結果になっています。

出典:サステナブル・ライフスタイル・レポート2023.pdf

持続可能な選択肢と一人ひとりの取り組み

それから、興味深いのは、私たちの買い物や消費に関する項目です。「食品価格が値上がりした」と考える人は8割以上ですが、
環境や社会に配慮した商品の選択肢が増えた・・・・・74.4%
商品がどのように作られ調達されたかを確認する・・・60.7%
ともなっており、「持続可能な選択肢が存在し、かつ適正価格で提供されている」と考える商品・サービスは、「食品・飲料」「日用消費財」でともに6割弱。という結果も出ています。
今までのエコ活動から、日本はかなり進んでいると感じる部分もありますが、次の表にもあるように、世界と比較してみると、6か国比較ではありますが最下位が目立ってしまっています。一人ひとりの取り組みもさることながら、エネルギーや暮らしの中で工夫できるサービスが、日本社会でももっと浸透させていく必要があるかも知れません。


出典:サステナブル・ライフスタイル・レポート2023.pdf

サステナブル・ライフスタイルに活用できる認証。サステナブル・ラベル

みなさんが日常で買っているもの、利用するサービスなど、日々新しく、素晴らしいもの、サステナブルな製品・サービスは増えつつあります。その中で、何が信頼できるのか、そのサステナビリティの信頼性が問われてくることでしょう。
一見エコ・サステナブルだと見えても、本当に?!とどう判断すればよいのでしょうか。その選択の基準の一つに、サステナブル・ラベルも活用できるかと思います。
サステナブル・ラベルの詳細リンク()

例えば、オーガニックの話題は何度か皆様も聞いたことがあることでしょう。有機・オーガニックは、特に有機農産物など食べ物を見てみると、法律で定められている認証基準があり、第3者の審査・認証を経たものしか、「オーガニック」として表示や販売をすることが出来ません。年に一度は専門家である検査(審査)員が現地を訪れ、基準に合致しているかを確認し、認証された製品に、例えば有機JASのラベルが付けられます。つまり、自称有機・オーガニックだと保証がなく、実は表示も規制されているのですが、確かに有機・オーガニックだということを、消費者のかわりに現地まで確認されている、という点がオーガニックの信頼性にもつながります。つまり、信頼性・透明性のある、確かなものを選択することが可能となっています。国(行政)の方でも、市場で販売されているものをランダムに購入し、認められていない成分が含まれていないか、分析も行っています。このように、生産者にも購入する消費者側にも安心・安全をどのように担保するかの努力が行われていると言えましょう。

サステナブル・ライフスタイルで豊かな今と未来へ

日々の暮らしを充実したものにしたい。美味しいもの、楽しく充実した時間。その根底を支える環境や社会がサステナブルであるために、私たちが出来ることは無限あり、あらゆる可能性を秘めています。
もし趣味や仕事で食にかかわる方は、その食材や流通でどのような土壌、自然、人々がかかわっているのか、素敵なレストランに並ぶ料理にも、素敵なストーリーが感じられる食。サステナブル・レストランも増えて来ました。また、一見美しいジュエリーなどが、紛争鉱物や製造過程で人々が苦しんでいたら、輝きも失せて見えてしまうかも知れません。音楽をされていたら、ピアノやギター、バイオリン他、構成する原料の木や素材は、どんな環境で育って私たちの手にあるのでしょうか。家具や文具・雑貨も同様です。
サステナビリティはあまり難しく考えることはなく、まずどんな場面でも、「愛のある選択」と自分なりの納得出来る「選択の基準」を増やしていき、それぞれが素晴らしい選択があふれる先に、自然とサステナブルな社会へと繋がっていくことでしょう。
選択の基準は一つではありません。花一本一本が個々に違いがあり、素敵な個性があるように、視点は多様であっていい世界です。そして、その花が集まり花束となって、更にみんなであたたかい社会に繋がっていくことを期待しています。是非一緒に素敵なライフスタイルへとご一緒出来れば幸いです。

書籍のご紹介

2024年2月発売
【サステナブル調達を成功させるための国際認証の教科書】

なぜ、「国際認証」は必要なのか?
「経済合理性」ばかりを優先させた企業の経済活動は、環境破壊、人権問題など
負の遺産を生みます。そうしたプロセスを見える化し、サステナブル調達に転換
させるツールが国際認証です。
本書では国際認証が誕生した背景と考え方、認証を取得するための要件も解説
します。

※書籍の詳細
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山口真奈美 プロフィール

一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会 代表理事
サステナビリティーアドバイザー研究所勤務などを経て2003年に独立。持続可能な原材料調達やサプライチェーンにおける環境社会的配慮に向けた基準策定・環境・CSR・生物多様性・国際認証&ラベルの研修・教育事業を行う。
外資系認証機関の日本法人代表を兼任後、日本サステナブル・ラベル協会(JSL)を設立。環境や社会に配慮した持続可能な国際認証を軸に、多岐にわたる認証も支援。企業活動やライフスタイルを「よりエシカル&サステナブルに転換すること」を目指し、コンサルティングのほか、さまざまな活動にも従事。
一般社団法人日本エシカル推進協議会副会長、オーガニック関連団体の役員、FEM代表、環境ビジネスプラス理事長などを兼任。一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会
https://jsl.life/
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