代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
約半年ぶりに19都道府県への緊急事態宣言と8県への蔓延防止等重点措置が全面解除されましたが、まだまだ多くの人が「第6波」への警戒を続けています。この先も、withコロナの新しい生活様式を取り入れていかなくてはなりません。そこで今回は、おうち時間が増えた中でちょっとしたブームになっている「ガーデニング」を取りあげてみました。
目次
コロナ禍でブーム到来!
コロナ禍の「ステイホーム」は新たなライフスタイルが定着するきっかけとなりました。在宅時間が増えたことにより家での行動が変わり、「時間の使い方」も変わりました。中でも、ガーデニングなどの園芸に、時間を使う人たちが増えています。総務省の家計調査によると、2020年の、一世帯あたりの園芸用植物と、園芸用品の支出額が、昨年対比で4747円増えているそうです。
LOVEGREEN(https://lovegreen.net/ )が、新型コロナにおける暮らしへの影響に関するユーザーアンケートを実施したところ、「外出を控えている」と回答したユーザーは約6割にのぼり、自宅での過ごし方については、約4割が「園芸・ガーデニング」をして過ごしていると回答がありました。
ガーデニング川柳コンテスト
名古屋市の園芸メーカーである株式会社花ごころが、設立70周年を記念して今年の春先に開催した「ガーデニング川柳コンテスト」は、園芸への関心の高まりを感じると同時に、時代やコロナ禍の暮らしを映す作品を通して、癒し効果のある園芸の重要性を再認識するイベントとなったようです。
【最優秀賞】 定年後 夫すっかり 愛菜家
【社長賞】 巣ごもりの 心晴れ晴れ 土いじり
【優秀賞】 「もう一日!」 熟れるの待てば 食われてる
手の傷の 数だけ咲いた バラの花
最優秀賞の「定年後 夫すっかり 愛菜家」は、リタイア後に家庭菜園を趣味にして、イキイキと過ごされている様子が伝わってきますし、社長賞の「巣ごもりの 心晴れ晴れ 土いじり」は、コロナ禍の閉塞感を土と植物に触れて解消してます、という園芸の癒し効果が表現された作品です。たとえ自粛を強いられるコロナ禍が去ったとしても、人生100年時代と言われる現代、心身ともにイキイキとした時間を過ごすのに、園芸や植物は有効だと多くの人が気づいたことが、昨今の園芸ブームにも繋がっているのだと考えます(同社の結果公表)。
検証された「ガーデニング」の健康効果
自然や緑に接することで、ストレスを軽減する効果が期待できるという研究は相次いで発表されています。
◆自然とのふれあい
ひとつは東京大学大学院農学生命科学研究科の曽我昌史氏らの研究チームが、東京の一回めの緊急事態宣言が解除された直後に行った都民対象の調査によるものです。
研究グループは、3,000人の都民を対象に、6月初旬の3日間、うつや不安レベル、生活満足度、主観的幸福感、孤独感などを評価しました。
自然とのふれあいの状況と、メンタルヘルス状態の関連を解析した結果、緑地の利用や、自宅の窓から緑が見えることは、生活満足度や主観的幸福感を高め、うつ・不安レベルや孤独感を減らす傾向がみられたと報告しています。
「都市における自然は、今回の新型コロナのような、ストレスの大きい出来事によってもたらされる悪影響を減らすための、バッファ(緩衝材)として役立てられる可能性があります」と、曽我氏は述べています。
◆市民農園
また別の研究グループは、手ぶらで野菜作りができるサポート付き市民農園の利用による健康効果について調査し、5月に発表しました【東京大学×シェア畑 共同調査】。
調査は昨年7月、市民農園のある7都府県で、市民農園利用者344人と非利用者で家庭菜園なども行っていない200人の男女を対象に、インターネットを通じて実施。その結果、精神的健康度の不健全性を示すスコアは、市民農園の利用者で2.0点、非利用者で4.5点となり、2.3倍の違いがあることを報告しています。
「土を耕したり苗を植える作業が、適度に体を動かすことにつながり、ストレス発散効果が期待できます。また、野菜や自然とふれあうことによりリラックス効果を、家族や利用者同士でコミュニケーションをとることで健康促進効果を、それぞれ期待できます」と、曽我氏は指摘しています。
◆庭いじり
学術誌「看護実践のための研究と理論(Research and Theory for Nursing Practice)」に2009年発表された調査結果では、庭いじりに没頭することで心配事から気をそらすことができ、自分が抱えている問題に執着しなくなることが示されていいます。
被験者は12週間の調査期間中や直後にうつ病の症状が改善した上、3カ月後になっても顕著な改善がみられると報告しています。
人はストレスを感じているとき、体内でコルチゾールと呼ばれるホルモンを放出します。体内のコルチゾール水準が高い状態が続けば、うつ病や精神疾患、免疫機能の低下、体重の増加、心臓病など、さまざまな問題のリスクが高まる恐れがあります。驚くことに、自然とふれあう時間を過ごせばこうした状況が制御できるのです。
まだある!ガーデニングの効用
「ガーデニング」とは通常、園芸,造園全般を意味する言葉でしたが,現在では西洋式の手法を取入れた園芸から,植物を植えたり,ふやしたり,手入れをすることも含めガーデニングというようになりました。日本で〈ガーデニング〉という場合は、家庭園芸を主とし,庭に限らずベランダや屋上などで花と緑を楽しむことも含んでいます。最近は、家庭菜園も含むようになっています。
ガーデニングには、心と体に良い「エッセンス」がいっぱい含まれています。
◆心理的効用
感受性が豊かになる
植物を育てることは、視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚の五感を刺激し、忘れかけていた記憶を呼び起こしたり、感受性を豊かにする効果があるといわれています。
人間らしさを取り戻す
植物の成長を見守ることは「育てる」本能を満足させ、また美しい花や実を摘み取ることは「狩る」本能を充足させることにつながります。つまり、現代社会の中で忘れかけていた、人間が本来持っている原始的で素朴な感情を取り戻すことができるのです。
認知症防止に役立つ
ガーデニングは、季節や天候に合わせて水や肥料を変えたり、温度管理に気を使ったりと、常に頭を使って工夫しなければいけません。こうした一連の「頭脳労働」が認知症予防に役立ちます。
◆身体的効用
意識的に体調を整えるようになる
ベランダや庭、畑で作業をする場合には、風や雨にも負けない健康な体作りが必要になります。ガーデニングに夢中になると、植物を枯らしたくないという気持ちから、意識的に体調を管理するようになるそうです。
運動不足を解消する
ガーデニングは重いコンテナや土を運んだり、腰や手足を曲げたり、立ったり座ったり体を動かす作業が多く、運動不足の人にとっては最適の趣味です。
日光にあたり、体を丈夫に
ビタミンDは日光にあたることでたくさん作られますので、骨を丈夫にするためにも日光を浴びることはとても効果的です。しかし、紫外線がシミやシワをつくる原因となる可能性もありますので、長袖を着たり、帽子をかぶって作業をすると良いでしょう。
マイナスイオンいっぱいの空気を吸ってリラックス
最近話題のマイナスイオンは、植物からもたくさん発生します。特に、土や植物に水をまいたり、雨の降った次の日に土いじりをするとたくさん発生するため、心身ともにリフレッシュしたい時にはおすすめです。
以上、エゴレジ研究所から、コロナ禍でちょっとしたブームのガーデニングについてご紹介いたました。植物は遠くから眺めているだけでも心を癒してくれますが、自分の手で育てることで、思いがけない健康効果も得ることができます。果物や野菜を育てれば、新鮮な食材を楽しむこともできます。自分の手で育てたものを使った料理ほどおいしいものはないはず。園芸経験がなくても、一度は試してみませんか。30分時間ほどの時間をつくって、小さなことから始めてみれば、その楽しさに驚くかもしれません。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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