《和文化》笛 寶 山左衛門(六代目 福原百之助)

こんにちは!
笛の福原百麗(ふくはら ひゃくれい・藤本博子)です。

7都府県では緊急事態宣言が発令され、テレワークに外出自粛と、皆さんも籠る生活を強いられてらっしゃることと思います。

家にこもって笛のお稽古などのオンライン化を進めたいのですが、平日はどうしても出掛けなければならない仕事のため、中々作業は進んでおりません。
世の若者達とは逆に「こもりたい!」とモヤモヤしております。

さて今回は前回に続き、強く私を惹きつけた演奏家をご紹介いたします。
以前にも少し触れたことがありますが、もう惹きつけられたというより、孫弟子になってしまったほどのご縁を頂いた、長唄囃子 福原流の先代家元、六代目 福原百之助、四世 寶山左衛門(たから さんざえもん)師です。
ご存命であれば今年98歳。大正4年に、代々福原流の鳴物(小鼓、大鼓、太鼓)をされている家に生まれ、戦中・戦後の激動期を乗り越え(まさに今コロナで多くの演奏会や文化活動が中止されているのと同様、文化活動が禁止され演奏家も戦場に行かされた時代でした)、笛や長唄の素晴らしさを一般の人々にまで広めた功労者です。
平成5年には笛方としては初めて人間国宝にも認定されました。

師の功績は何と言っても、「見て盗め」の伝統芸能の隠された世界をオープンにし、誰にでもわかりやすい譜面を先代(父上)と共に作り上げ、西洋音楽にも対応できるよう楽器も改良されたことでしょう。
これによって一気に一般の愛好者が増えたと言えます。
祭囃子や長唄ばかりでなく、叙情歌、ポップス、現代音楽等々、演奏の幅が格段に広がり、カルチャーセンターなどでも教室が増えていきました。

もちろん、譜面や楽器の改良ばかりではありません。
人言国宝にまでなられた方ですので、その演奏も突出したものがありました。
突出したといっても、すごい超絶技巧とか、華々しいものでなく、「自然な美しさ」というものでしょうか。
そこには緻密な計算があったと直弟子で鞄持ちまでされていた我が師匠はよく話してくださいました。

笛や鳴物、或いは唄、三味線を習われている方は当然お師匠さんの演奏された音源をお手本にされていると思いますが、それだけでなく師匠の流派のお家元や、その他の一流の演奏者のCD(音源)を参考に勉強されているはずです。

多分どなたも参考にしているであろう長唄の全集が古くからありまして、(というより全集はそれしかなかった)それが「芳村伊十郎(七世)長唄全集」です。
主だった曲が網羅されており、私もかなりお世話になりました。
芳村伊十郎師も今となっては伝説的な方ですが、その全集でほとんどの曲の笛を吹かれているのが寶山左衛門師です。

たまに囃子方が主役になる場面もありますが、基本、唄と三味線が主役であり、それを引き立てる役でなければならない。さらに歌舞伎や日本舞踊では、踊り手さんが舞いやすいよう、場面に応じた、場面を引立てる役割であることを意識しなければならないと仰っていました。

唄や三味線、踊り手さんを引立て、笛が主役の場面であっても「待ってました!」とばかりに自己主張するのでなく、その場面の風情を叙情的に歌い上げる。
それが師の「自然な美しさ」です。

一般の方には長唄を聴くのはちょっと敷居が高そうで中々踏み出せないと思いますが、篠笛だけのCDも幾つか出されておりますので、よろしければ聴いてみてください。
古いものの方がおすすめです。

我が師匠曰く、見た目は優しいおじいちゃんのようだけど、お堅い伝統芸能の世界ですから、優しく手取り足取り教えることはなし。簡単に褒められたら要注意。「だめだこりゃ」と思われたら何にもアドバイス下さらなかったそうです。
いかに食らいついて学び取るか必死だったそうです。

私がお名前を頂き、名取となったのは人間国宝になられる前のこと。
何度かお会いしたことはありますが、少ない言葉や仕草、舞台での様子を目を皿のようにして、耳をダンボにして学んだ師匠の苦労を思うと気が遠くなります。

多くの弟子達、他の流派の笛方さん達、祭囃子や色んな篠笛吹きさんがおられますが、本当に伝統芸術を理解した笛方で寶先生を超える人は今もいないだろうと思います。

●ストアカ(Street Academy)では「篠笛体験講座」をリクエストベースで開設しております。
ご興味お有りでしたら、こちらからぜひどうぞ!
個別にメールでのお問い合わせにも対応させていただきます!

https://www.street-academy.com/myclass/38288?

●個別にお稽古のご希望、ご相談等ございましたら、こちらまでどうぞ!

ワード・スピリット 藤本博子
wordspirit.curation@gmail.com

藤本博子(福原百麗)

伊藤忠商事を皮切りに、転職8回、事務職から営業、大道芸人まで20の職種を経験。16年間、人材派遣・紹介会社にて営業、転職コンサルタントとして勤務後、独立。

これまでのべ1万人以上の就業・転職サポートを行い、2013年には人材大手転職サイト主催のスカウトコンテストにて1位(部門別)獲得。

現在、民間委託の求職者支援訓練指定校(セラピスト養成)にて就職支援講座(自己分析、就活実技、顧客サービス等)及びキャリアカウンセリングを担当。現在、京都造形芸術大学で芸術学を学びながら、アートを取り入れた「じぶん分解ワークショップ」を開発。訓練校やセミナー等で広く活用している。

一方、長唄囃子福原流笛方として演奏活動の他、洋楽(フルート)との比較やビジネスの視点から見た指導は非常にユニーク。

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