ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
国連の世界幸福度レポート2018では、3年連続でフィンランドを世界で最も幸福な国にランキングしました。そんなフィンランドでは、意外とシンプルな方法で幸せになっているのだとか。
『The How of Happiness』の著者である心理学者のソニア・リュボミルスキー博士の研究によると、人生の主導権を握るのは40パーセントの確率で自分自身ということです。どうやら幸福とは、前向きな気持ちの強さではなく頻度次第で、そのレベルを上げていくのは簡単らしいのです。前回に引き続き、これをご紹介します。
目次
🔴幸せな人、幸せじゃない人の分類
ソニア・リュボミルスキー博士らは人間が社会的比較にかかわる情報に接した時の個人の反応を調査しました。
結果から言えば、幸福な人ほど打撃(ダメージ)を受けないことが明らかになりました。
リュボミルスキー博士は、日常的幸福感(その時々の気分として使われる)を測るためのテストを行い、被験者を主観的に比較的幸福な人、比較的不幸な人に分類しました。
◆主観的幸福スケール
質問を読み自分に最も当てはまる数字を◯で囲んでください。
1.自分は大体において 2.周囲に比べて自分は 3.基本的に極めて幸福な人がいる。 4.基本的に幸福でない人がいる。 |
🔴幸せな人は過去の自分と競争する!
上記のテストでの分類をもとに、一つ目の調査では被験者たちにアナグラム(つづりを入れ替え、別の言葉にするゲーム)の問題を解いてもらいました。作業中、隣では他の人(実は実験協力者)が同じ問題を解いています。この隣の人は被験者より早く解いたり、わざと遅くしたりしていました。
リュボミルスキー博士はこの調査で、幸福な人は隣の人の作業が速くても遅くても、ほとんど気にしないことを発見しました。さらに自分のアナグラム処理能力の評価とそれについての感想を求めたところ、幸せな人の自己評価は実際に問題を解く前より、後の方が高くなっていました。それは隣の人が自分よりも速かった場合でも処理能力の評価や感想はやや上向いていたのです。
逆に幸せではないと思っている人は自分の作業が速い場合、能力評価が高くなり、感情がプラスになり、自分が遅い時は能力評価も低くなり、感情がマイナスになっていました。
🔴幸せな人の共通点は他人と比べないこと!
次の調査では、被験者にビデオ撮影のために幼稚園の先生になってもらいました。専門家が一人ずつにつき(実は実験協力者)、後で被験者に先生としての指導ぶりについて、詳しいコメントを与えます。被験者はパートナーと二人一組で、各々に同じことを教えるよう指示されます。調査の狙いは、専門家のコメントが被験者の気分にどう影響を与えるかということでした。
結果は幸福な人は良いコメントをもらうと気分が上向き、悪いコメントをもらうと気分が落ち込みました。でも、パートナーへのコメントを聞いても聞かなくても気分に変化はありませんでした。
一方、幸福ではない人は良いコメントをもらっていても、パートナーがそれ以上に良いコメントもらっていたら気分が落ち込み、反対に自分が悪いコメントをもらっていても、パートナーがもっと悪いコメントをもらっていれば、気分は上向きました。つまり、幸せではない人の尺度は常に「相対評価」誰かとの比較ということです。
🔴誰でも幸せになれる方法がある!
リュボミルスキー博士は、この違いについて突き止めようとしました。幸せな人にも幸せではない人にも作業について否定的なコメントを聞かせた後、別なことを考えさせ、気を紛らわせるように仕向け、どちらも気分を立て直しました。
次にどちらの人にも否定的なコメントを聞かせた後、それについてじっくり考えるように仕向けたところ、両者に違いはなく、どちらも気分が落ち込みました。
この結果から推論して、立ち直るか、落ち込むかの反応を分けるのは単に「気分を紛らわせるか」、「じっくり考えるか」の違いでした。人間は幸福な人も幸福でない人も悪く言われるのは良い気分がしません。ですが、どちら人も深刻に考えず、気分を紛らわせ、気を取り直せば、前進できるようです。
結果として、幸福な人は気分を紛らわして,気を取り直し、前進する能力があり、幸福でない人は気分転換が下手で、いつまでもくよくよ考えて、ますます落ち込んでいく傾向があるということです。幸せな人は、ネガティブなことを言われても気にしないようです。だから、結果的にそのことから注意をそらし、前に進んでいけるのです。
はっきりしているのは他者と比べることは何の役にも立たない、というかマイナス要素が多いということです。
🔴幸せをつくる習慣
幸せの指標をはかるものとして、「幸せをつくる習慣とはどんな行動なのか」という研究結果があります。ソニア・リュボミアスキー博士は著書「幸せがずっと続く12の行動習慣」で、紹介しています。
1:感謝の気持ちを表す
感謝を示すことは、シンプルに幸せを感じられる行為として有名です。普段接している相手に、感謝の思いを口に出して伝えましょう。
2:楽観的な気持ちを高める
将来を悲観しすぎると、幸福を感じられません。今ある幸せに気づきましょう。
3:考えすぎない、他人と比較しない
問題に直面することはあるでしょう。でも、必要以上に悩まないことが大事なのです。また、自分とほかの人と比較することも幸せのさまたげになります。
4:人に親切にする
人に親切にすることは、幸福度を高めます。
5:人間関係を育む
「大事な人たちとの人間関係」、「つながり」の深まりをあじわえると幸せを感じます。
6:問題に立ち向かうための対策をとる
自分が抱えるストレスや悩みに対して、対抗策を練っておくことも幸福度を高めるようです。
7:人を許す(寛容)
人に怒りやイライラを持ち続けることは、幸福度を下げます。
8:心から打ち込める活動をもっと増やす
趣味や仕事など、熱中できる対象に打ち込むのも幸福度が高まります。いわゆる「フロー体験」です。
9:人生の喜びを深く味わう
つい忘れてしまいますが、人生の喜びにもっと焦点をあてて、幸せを味わいましょう。
10:目標の達成に全力を尽くす
未来にとって重要な目標を定め、その目標に日々近づいている感覚を味わえると、毎日に幸せが訪れます。
11:宗教やスピリチュアルなものに関わる
自分の内面や精神的なものを感じましょう。
12:身体を大切にする
適度な運動、食事に気をつけて、暴飲暴食をしない。「自分は節制できている」というコントロール感を持つことも、幸福になることです。
あなたも、以下の3ステップでやってみましょう。
1)12の行動習慣について、それぞれセルフチェックする
2)まったく実行できていない場合は「0%」、確実に実行できている場合は「100%」として計測する
3)現状よりも幸福度を高めるために、12のうちから何ができるか具体的な行動を3つ書き出して、習慣にできないか考える
点数が高い習慣はキープして、点数が著しく低い習慣があれば底上げができないか考えてみましょう。
それだけでも、幸福度は高まります。
リュボミルスキー教授はポジティブ心理学の専門家です。エゴレジ力もアップする行動習慣ですから、一つでもトライしてみてはどうでしょうか。
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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