今回は「4カ月目からやさしい高額療養費制度」について、ガンを例に一体どんな風にやさしいのかを具体的にお話しします。
ガンに罹患した場合、ステージや年齢にもよりますが、だいたい手術で14日程度入院した後、点滴または錠剤の抗がん剤治療が行われるのが通常の流れです。この抗がん剤がちょっと大変。初発だと手術後半年から1年程度投薬が続きます。その後定期検査で再発や転移がないかどうかチェックしていくのですが、再発や転移が見つかった場合、再度抗がん剤の投与が始まります。最近の抗がん剤は点滴もありますが錠剤も多く、日帰り入院や自宅での内服がほとんどです。
最近の抗がん剤は、投与の前に、病院側で患者の体に合うかどうかのマッチングをすることが多いです。血液から採取した患者の遺伝子と薬を照合させ、効果があるのかどうか、副作用は最小限に抑えられるのかどうかを調べて、効果があり副作用が比較的少ないと見込めた薬を患者に投与します。なので、必然的に薬が効く。がんには「寛解」はあっても「完治」はありません。亡くなるまでのお付き合いとなる可能性が高い。つまり、がんの治療は薬が効く分だけ長期化するのです。
抗がん剤の投与は、薬にもよりますが、だいたい2週間続けて投与し1週間休薬、これを1クールとし、3クールを一区切りとして効果の程度を検査します。ここで問題なのは1クールの薬代ですが、限度額認定証を使った場合、つまり高額療養費制度を使った場合でもだいたい9~10万円程度かかります。先ほども初発で半年から1年程度の投与と書きましたが、半年の場合「4カ月目以降も同じ」だと、単純計算で45~60万円程度が持ち出しとなります。しかし「4カ月目からやさしい」場合だと、39~42万円とかなりの減額となります。
「4カ月目からのやさしさ」がより威力を発揮するのは再発や転移が見つかった場合です。初発と違い、多くの場合患者さんの体力と薬の副作用の程度が許すまで、抗がん剤は投与され続けます。抗がん剤が使えなくなった後は、モルヒネなどの疼痛緩和薬がメインの投与となります。これは亡くなるまで投与されますが、末期になると服用の制限がなくなるので、薬の量とそれに伴う薬代はかなりの額になります。スーパーのビニール袋(大)にパンパンに入れられたモルヒネを「好きなだけお飲みください」と処方されるのです。患者さんも家族も、「4カ月目からのやさしさ」がなければやっていけません。
がんは10年生存率を見ていく時代になりました。がんのみならず、これから医療も医療制度もどんどん変わっていきます。個人的には医療保険を考えるのが一番難しい。ただ、高額療養費制度を踏まえた設計は、どんなに医療現場の中身が変わっても、基本中の基本だと思っています。
水原 曜(みずはら ひかる)
2014年 住友生命保険相互会社東京本社入社。
「人生最後の転職先に保険会社を選んでしまう」という大ポカを犯してしまうもどうにか乗り越え、2017年4月より指導職に。部下に踊らされる毎日。
個人、法人問わず、フローとストックのバランスを重視した中長期的「無理しない」リスク対策のコンサルティングが最も得意です。
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