《健康》エゴレジとフロー体験

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。

エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

🔴フロー体験

あなたにはこんな経験がありますか?
“好きなことや楽しいことに時間を忘れるほど取り組んだことがある”“物事に取り組んでいたら、思ったより時間が経っていた”こうした経験をしているのなら、あなたはフローを体験しているのかもしれません。

フロー」はミハイ・チクセントミハイによって提唱された概念です。チクセントミハイは、ハンガリー出身のアメリカの心理学者。ポジティブ心理学の「幸福」「創造性」「主観的な幸福状態」「楽しみ」の研究などを行っています。

フロー」とは、物事に取り組んでいることに完全に浸り、集中していて他のものが目に入らない精神状態になることを言います。この状態を流れる水に例えて描写されたのがフロー(Flow)の由来です。フローは、物事に取り組んでいることが非常に楽しいので、純粋にそれをするために多くの時間やエネルギーを注ぎ込む状態です。フローという状態になることが、最も望ましいことであり、フロー体験を増やすことが生活の質を向上させるとチクセントミハイは述べました。また、その後の実証研究では、フロー体験をすることでエゴレジの力もアップすることが解かっています。

🔴フローの発見は「大人の遊び」調査から!

フロー体験は、1968年に「大人の遊び」をテーマとして学生に調査を行い発見されたものです。このレポートは「遊びの性格をもつことに取り組んでいる時にこそ、楽しさを感じ有意義な体験をする」という仮説のもとでまとめられています。

フロー体験には文化や性別に関わらず、以下のような特色があるとされています。

過程のすべての段階に明確な目標がある
目的が不明瞭な日常生活でのできごととは対照的に、フロー状態では、常にやるべきことがはっきりわかっている。

行動に対する即座のフィードバックがある
フロー状態にある人は、自分がどの程度うまくやれているか自覚している。

挑戦と能力が釣り合っている
自分の能力に見合ったチャレンジをしていて、簡単すぎて退屈することも、難しすぎて投げ出したくなることもない絶妙のバランスの上にいる。

行為と意識が融合する
完全に今やっていることに集中していている。

気を散らすものが意識から締め出される
完全に没頭して、日常生活のささいなことや思い煩いが意識から締め出されている。

失敗の不安がない
完全に没頭していて能力とも釣り合っているので、失敗への不安を感じない。逆にもし不安が心に上るとフローが途切れて、コントロール感が失われてしまう。

自意識が消失する
自分の行為にあまりに没頭しているので、他の人からの評価を気にしたり、心配したりしない。フローが終わると、反対に、自己が大きくなったかのような充足感を覚える。

時間感覚が歪む
時間が経つのを忘れて、数時間が数分のように感じる。あるいはまったく逆に、スポーツ選手などでは、ほんの一瞬が、引き伸ばされて感じられることもある。(「ゾーン」に入ると呼ばれる)

活動が自己目的的になる
フローをもたらす体験は、意味があろうとなかろうと、ただフロー体験の充足感のために楽しむようになります。たとえば芸術や音楽やスポーツは、生活に不可欠でなくても、その満足感のために好まれています。

こうしたフロー状態になる活動、フロー体験が起こるメカニズムは解明されておらず、1人1人違っています。自分自身で、フロー体験が起こる物事や状況を見つけていくことになります。そのためには、自分のスキルを生かす物事や機会を発見し、取り組むことが大切です。つまり、能動的に行動を起こすことが重要です。

🔴フロー体験のポイント!

1.自分を変えるのではない
フロー体験の考えでは、「行動すること」に重点を置いており、フロー体験により充実感や肯定感につながるという考えが基本になっています。自分を変える「方法」や「考え」に主眼を置く自己啓発とは異なった観点からの考え方です。

自分自身を変える近道は、自己啓発によって自分を変えることではないといいます。自己啓発を実践しようとする努力は失敗するからです。しかし生活を変えて、打ち込めること、つまりフロー体験を見つけるなら、スキルを活用する機会が見つかり、チャレンジを繰り返すようになり、おのずと自分は変わっていくといいます。

2.注意力の投資が必要
 テレビに比べると、趣味は2.5倍、活動的なスポーツやゲームは3、高められた楽しみを感じやすく、フロー体験を得やすいそうです。それなのに多くの人は、趣味やスポーツをする時間の4倍以上をテレビに費やすそうです。これは、フロー体験を生む活動には努力がいるのに対し、テレビなどの受身的レジャーは楽だからです。

本当にフロー体験を得たいなら、ある程度の注意力の投資をして技術を磨かなければいけません。

3.テレビを消して本を読む
2番目の点と関連して、テレビよりも読書をたしなむほうがフロー体験を得やすいという研究があります。

フロー体験を得るには、受身的な活動ではなく、能動的・積極的な活動が必要なのです。

4.仲間の存在
孤独であることと学問や芸術での成功はよく関連付けられがちですが、実際にはフロー体験には仲間の存在は大切です。

ひとりになって考えをまとめる時間も大切ですが、フロー体験の達成感を支える要素の一つは、同じ価値観を持ち、互いに目標を尊重し合える仲間から得られるフィードバックなのです。

フロー体験の考え方は様々な場面で応用することができるでしょう。仕事や日常生活において明確な目標を設定し、迅速なフィードバックを受けられる環境を整えたり、チャレンジとスキルのバランス調整を行ったりすることで、フロー体験が生じる可能性が高まります。フロー体験によって仕事の効率が向上したり、日々の生活が楽しくなって生活の質が向上したりするなどの恩恵を受けることができるのではないでしょうか。もちろん、エゴレジの力もアップします。フロー体験の原理をうまく利用して、生き生きとした生活を送ってみませんか。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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