《和文化》佐竹本三十六歌仙絵

こんにちは!
笛の福原百麗(ふくはら ひゃくれい・藤本博子)です。

台風15号、19号に続き、21号による先週の豪雨で私が住む千葉県は
甚大な被害が発生し亡くなられた方もいらっしゃいました。
被害を受けられた皆様には心よりお見舞いと早い復旧を祈念申し上げます。
毎度コラム投稿の度に災害が起こり、お見舞いの言葉も虚しく響くばかりですね。

さて、既に様々な宣伝やNHKの人気番組「歴史秘話ヒストリア」でも先週取り上げられてご存知の方も多いことと思いますが、京都国立博物館ではもう2度と観られないだろうと言われている「佐竹本三十六歌仙絵」が公開されています。

秋田の藩主であった佐竹家に伝来し、長く所蔵していた鎌倉時代の国宝級の絵巻物。
そのため通称「佐竹本」と呼ばれているのですが、万葉集から平安時代中期までの代表的歌人、三十六歌仙の肖像画と歌が書かれた長大な絵巻物です。

何と言っても人々の関心を唆るのは、絵巻物が辿った数奇な運命と巻物が分断されたというショッキングな出来事でしょう。

財政的な問題もあり手放さざるを得なくなったこと。
複数の古美術商からある実業家へ、更に当代きっての美術収集家・パトロン達によるくじ引きによって絵巻物は分割、購入され、流転の変遷をたどることとなります。

そのようなヒストリーは素人でも興味深く感じるでしょうし、作品自の大半が重要文化財の指定を受けており、美術的にも必見の価値があります。
またこれも多くの専門家も指摘してますが、分断されたそれぞれの歌仙絵にはその作品に合った素晴らしい表装(掛け軸や屏風に仕立てること)がなされていることも見逃せません。
表装をされる表具師はその作品・時代に合った裂(きれ)を選び仕立てなくてはなりませんので、技術のみならず、知識や感性も求められる高度な伝統技術者と言えます。

長い美術品を「切る」とはいかにもショッキングな話ですが、
元々そのような長い和紙を梳けるわけはなく、和紙を繋いで巻き絵にしていますので、
正確にいうと「一枚ずつ剥がした」ということになろうかと思います。
西洋では絵を切って分断なぞしたら、どんな高額の絵画でも価値はゼロになってしまいます。
ところが、日本の美術は分断してもそこに表装が加わると新たな価値が加えられ、立派に美術品として成立するのですね。それが日本芸術の特異性であり、面白さなのだと思います。

日本という国は慣習やルールに囚われて、GAFAのような世界を牽引する新しいビジネスは生まれないと思われていますが、芸術というジャンルで見ると意外にも世界を驚かせるような発想や特異性を古くから持っていたのです。
そのように美術や芸術を通して、現代を考察してみたり、ビジネスにも共通することを見出すことに個人的には非常に面白さを感じています。

切断された三十六歌仙絵はいくつかの美術館でも単独で鑑賞することはできるかと思いますが、本当に揃うことはもう2度とないかもしれません。
個人蔵の作品もありますので、残念ながら諸事情により全作品が展示されているわけではありません。それでもかなり博物館側も頑張って出品を実現できたと聞いています。
京都以外での巡回展はありませんが、遠方の方も旅行を兼ねてぜひ足を運んでみてください。

特別展「流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」
京都国立博物館
会期:11月24日(日)まで
時間:9:30~18:00(受付17:30まで) 金・土曜は20:00まで
休館:月曜、11月4日は開館(翌日休館)

藤本博子(福原百麗)

伊藤忠商事を皮切りに、転職8回、事務職から営業、大道芸人まで20の職種を経験。16年間、人材派遣・紹介会社にて営業、転職コンサルタントとして勤務後、独立。

これまでのべ1万人以上の就業・転職サポートを行い、2013年には人材大手転職サイト主催のスカウトコンテストにて1位(部門別)獲得。

現在、民間委託の求職者支援訓練指定校(セラピスト養成)にて就職支援講座(自己分析、就活実技、顧客サービス等)及びキャリアカウンセリングを担当。現在、京都造形芸術大学で芸術学を学びながら、アートを取り入れた「じぶん分解ワークショップ」を開発。訓練校やセミナー等で広く活用している。

一方、長唄囃子福原流笛方として演奏活動の他、洋楽(フルート)との比較やビジネスの視点から見た指導は非常にユニーク。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP