《健康》変化と適応する力

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

新型コロナウィルスの感染防止対策で、私達の日常生活にも「変化」や「不測の事態」が起きています。

エゴレジの力を提唱したブロック先生は、エゴレジの力を「環境の変化や不測の事態への対処能力、その状況で求められることと行動の可能性とのマッチング能力」としています。そうしたエゴレジの力が内外のストレスにさらされたときに適切な状況に自らを導くのです。エゴレジは誰もが持っている適応に役立つパーソナリティ資源です。今回は、「変化」とエゴレジの力「適応力」のお話です。

🔴「変進力」?

心理学と統計学による性格診断「ディグラム診断」を考案したディグラム・ラボ株式会社では、変化に適応して進化していける力を「変進力」と定義しています。ディグラム・ラボが考える、変化に適応して進化する力「変進力」は9つの要素=自己分析力・内省力・意思決定力・越境力・共感力・コミュニケーション力・受容力・素直さ・行動力=から構成されています。

同社で行った「変進力」に関するアンケート調査(20~50代の男女3,000名を対象)では、「あなたは変進力があると思うか」という質問に、「かなりある」「ややある」と回答したのは全年代の2割24%)に留まっています。

一方、「世の中が変化していることを感じるか?」という質問には、全年代で7割71%)が 「かなり感じる」、「やや感じる」と回答しています。また「以前(数年前)と比較し、世の中の変化が速くなっていると感じるか?」という質問についても全年代の7割弱66%)が「かなり感じる」、「やや感じる」と回答しています。

この2つの結果から、20~50代男女の多くが、変進力を身につけている自覚がある人は少ないものの、世の中の変化を敏感にとらえていることがうかがえます。こうしたギャップの背景には、変化のスピードや多種多様の変化に“対応できていない”現代人の問題点が浮き彫りにされています。

🔴変化への対応が難しいワケ

多くの人々が変化になかなか適応することができずにいるのには、4つの基本的な理由があります。

1.変化は好まれない
変化に抵抗するのは普遍的な感情であり、嫌悪と緊張を招きます。よって変化は人に好まれません。

2.未知のものに対する不安
結果が予測できないことには、不安なので抵抗してしまいます。

3.コンフォートゾーンから出ることになる
自分にとって快適な範囲であるコンフォートゾーンを大切にしたい人が多く、その範囲の外で冒険するのを恐れます。

4.確実性より不確実性が勝る
変化するときは未知の海路を航海すること(不確実性)を強いられます。人は自分が良く知っている確実な海路の方を好みます。

われわれの多くが変化を嫌い、抵抗するのは、それが単に人類の性質であるからなのです。誰でも自分のコンフォートゾーンの中で生きて個人的な習慣や行動パターンを維持することを好みます。しかし、どういう形であれ変化は避けられません。そのため、ある種の折り合いを付けていくスキルを身につけると、生涯にわたって、変化に適応するとき役に立ちます。

🔴変化に対応する力

職場での変化に適応するにしても、私生活でポジティブな変化を遂げようとしているにしても、スムーズに変化に対応して適応力を身につけるために必要なことがあります。 

❐先入観に惑わされず柔軟に対応する姿勢
変化に対応するためには、当然ですが、まず変化の兆しに気づかねばなりません。周りの人でも仕事でも、短期間で明らかに変化することもあれば、徐々にやってきて、気がつけば大きく変化していることもあります。それに気づくためには、先入観で物事を見ないことが重要になります。今日は昨日と同じ状況が続いている、という前提を持たずに、常に初見であるかのように物事を見ることができる人は、小さな差異にも気づくことができ、それに対応していくことができるのです。変化について自分の視点でしっかりと考え、正しく認識することが大切です。

他者からのフィードバックを認める受容性
小さな変化に気づいたら、次は新たな環境の変化に適切な対応ができるかどうかです。この対応の中では、ときに自分の考えや行動を変えることも求められます。そのために必要なのは、他者からのフィードバックに対する姿勢です。エリン・メイヤーの『異文化理解力』によると、日本人は世界の中でも、他者からの直接的なネガティブなフィードバックが嫌いな民族のようです。ストレートな意見が避けられがちな文化の中で、他者からネガティブなことを含めたフィードバックには、それ相応の受容性の高さが必要です。他者の意見を、自分への批判や攻撃のように感じて、すぐ反論するような人には、他者はフィードバックをしたいとは思わないでしょう。耳の痛いことでも受け止め、自分の考えや行動を変えることができる人になら、他者は有益なアドバイスや指摘をしてくれます。

自分の考えや行動を変えることをスマートフォンのアプリのアップデートで考えてみます。アプリをアップデートすると新しい機能が増え、問題のある古い機能は使えなくなります。つまり、欠点が改善され進化しているということです。

🔴変化を楽しむ人になる!

変化に遭遇するたびに「どう乗り越えて行こうか」と楽しみながら受け入れるほうが、モチベーションがあがり、ストレスも軽減されます。変化に対するアンテナが高いと気づきも多く、新鮮な毎日が送れるようになります。

変化を楽しむ人は、一つのことに固執しないため、異なる価値観や新しいものを柔軟に受け入れることができます。それは次第に自分の力となり、幅広い視野が身についたり、いろいろな分野の仕事に挑戦したりできるのです。だからこそ新しいチャンスにも恵まれます。さらに変化によって、脳が今までにないさまざまな刺激を受け活性化するため、いろいろなアイデアが出やすくなるでしょう。

変化を楽しむことができると、新しく出会う人も拒むことなくコミュニケーションをとることができるので、どんどん自分の世界を広げることができるでしょう。

変化自体には良いも悪いもありません。自分がどう捉えるかによって決まるのです。進化論で有名なダーウィンも「最後に生き残るのは、最も強い者でも最も賢い者でもなく、最も変化に対応できた者だ」と言っているように、環境に適応する力はあらゆる場面で役立つものです。いろいろなことが変化する時代。あなたのエゴレジを発揮するときです。どうせなら変化を楽しんで、明るい毎日を送りましょう。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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