《健康》エゴレジと今に感謝

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

「理想の自分」を思い描き、「現状の自分」とのギャップを埋めようと前進することで、人は成長する。そんな風に考えることは決して間違いではなく、とても大切なことです。

そうは言っても、毎日そんな風に頑張っていると、ふと「なんだか疲れたなぁ」と感じることはないでしょうか?「現状の自分」を変えようと努力しているのに、いつまで経ってもダメな部分ばかりが目について、「こんな私じゃダメだ」と自分で自分を追い詰めて、ストレスを溜め込んでしまうこともあるかもしれません。

頑張り屋さんのあなただからこそ、少しだけ肩の力を抜いてみませんか?実は、「現状に満足すること」は「現状に甘んじること」とは、似ているようで異なり、少ないストレスであなた自身をステップアップへと導いてくれる鍵になります。

🔴ポジティブ心理学「感謝」の効能

基本的には、感謝というのは、現状に満足し、納得している状態を指します。

カリフォルニア大学デイビス校の心理学者Robert Emmons博士は、「感謝日記(感謝の気持ちを日々綴る)」などの行為を継続的に行っている8歳から80歳までの1,000人以上を対象に調査を行い、それらの人々に以下のような変容が見られたことを報告しています。

 

【身体的効能】 【心理的効能】 【社会的効能】
免疫力アップ
痛みの軽減
血圧の低下
より運動し、健康管理に努める
よく眠り、目覚めが良い
ポジティブ感情の高まり
より注意深くなり、覚醒する
より楽しさや嬉しさを感じる
楽天性や幸福感の高まり
より他者を助け、寛容で、慈悲深くなる
より他者の過ちに寛大になる
より外交的になる
孤立感や孤独感の軽減

Emmons博士はこれらの背景にある心の仕組みとして以下の4点を挙げています。 

 ①感謝することで「今」から得られる喜びを最大化できる
新しい洋服、新しい車、以前よりも高い収入にすぐに慣れてしまうように。喜びや嬉しさなどのポジティブ感情も、あっという間に消え去り、時にはまるで何も起こらなかったかのように、私達はすぐに「これまでの自分」に戻ってしまいます。しかし、ポジティブ感情に順応するのではなく、一つ一つをたたえることで、喜びが増大し、人生を傍観するのではなく、心の底から味わうことができ、主体的に生きることができるようになります。

②感謝が、有害でネガティブな感情を排除する
嫉妬、恨み、後悔などは私達の幸福感を損ないます。しかし、感謝の気持ちとそれらのネガティブ感情は対極にあり、共存することができないため、感謝の気持ちに意識を集中することでそれらを排除することができます。

③感謝する人はストレスに強い
多くの研究によって、感謝の態度を持つ人は、トラウマ、逆境、苦しみからの回復がそうでない人より早いことが明らかになっています。Emmons博士はこの理由として、感謝の気持ちが、ネガティブな出来事に対する捉え方に影響を与え、ストレスや不安から身を守るように働くのではないかと説明しています。

④感謝する人は自尊心が高い
感謝することで、これまでの自分に貢献してくれた人々や、今の自分を支える人々のネットワークに気づきます。それらに目を向けることで、他者が感じる自己の持つ価値に気づくことができ、自分自身に対する見方を良い方向へ変えることができ、結果自尊心が高まります。

🔴今の自分を知る

「いま」の幸せを噛みしめながら、ストレスをあまり感じることなく、より良い自分にステップアップしていくヒントがあります。

持っているものに満足する
コップ半分の水を見て、「半分しかない」と思うか「半分もある」と思うかで、幸せを感じる度合いが大きく変わるという話は、聞いたことがあるかもしれません。「収入がこれだけしかない」、「こんな小さな家にしか住めない」と思わずに、「これだけ収入がある」、「住む家があって良かった」と、今持っているものに満足してみましょう。

◆「時間がない」を言い訳にしない
「忙しくて時間がない」というのを不遇に思うかもしれませんが、今ある時間を生かして、出来ることを考えてみましょう。たとえば、通勤時間を使って英語の勉強をするなど、今持っている時間を無駄にしない習慣を心がけると良いでしょう。

◆過去の経験に自信を持つ
立派な学歴や職歴がなくなって、過去に乗り越えてきた事柄は、誰にだってあるはず。英語のpresentには、贈り物という意味だけではなく、「現在」という意味もあります。今のあなたは、過去のあなたからの贈り物だと考えてみましょう。

◆人と自分を比較しない
周りを見渡せば、自分よりも贅沢な暮らしをしている人や、逆に自分よりも生活レベルの低い人がいくらでもいます。その人たちと自分を比較してどうかではなく、自分の尺度で自分の幸せをはかりましょう。

SNSを使い過ぎない
いつでも誰かと繋がりを持てて楽しいSNSですが、使い過ぎると、大切な時間を無駄にしてしまうこともあります。また、「他人と自分を比較しない」ためにも、過度の使用は避けた方が良いでしょう。

◆生まれてきた境遇に感謝する
毎日おいしくご飯が食べられること。一緒に楽しく過ごす仲間がいること。数時間でも電気やガスや水道が止まったら困るように、当たり前に出来ている今の生活は、実はかけがえのないものなのかもしれません。そんな当たり前のことに、心の底でそっと感謝することで、「いま」をとても大切な時間だと捉えられるはず。

◆「知らないこと」を認める
古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、「無知であることを知れ」と言いました。つまり、「知らない」ということは恥ずかしいことではなく、新しいことを知ることができ、成長できるチャンスなのです。

「感謝」とはすなわち、物事を大切に味わい、当たり前だとは思わず、対象(物事)に価値を見出すことです。エゴレジのある人の特徴の1つは、自分のまわりにあるリソース(人や関係、環境、道具など)をよく知っていて、必要なときに上手に活用できます。「今」に感謝すれば、「現状で持っているものを無駄にしたくない」という気持ちが生まれます。そうすることで、「現状の自分」を肯定しながら、少ないストレスで「より良い自分」へとステップアップしていけるはずです。今の自分に出来そうなことから始めてみましょう。また、それを始めた自分自身をしっかり評価してあげましょう。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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