弁護士が遺言書を偽造!?家族信託にしておけば…

堀内貴敬

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士 22歳で司法書士の資格を取得し、15年に渡り不動産や相続問題、相続対策のコンサルティングを行ってきた。相続対策について、法律だけでなく税務や不動産、保険などの視点も含めた総合的なアドバイスが専門分野。

一年ほど前、兵庫県で「弁護士が遺言書を偽造して遺産を依頼者に相続させようとした」というとんでもない事件が起こりました。
https://www.sankei.com/article/20200731-A3KB4DYUZRJPRGAPLMVCDZU6VU/
皆さんを守る使命があるはずの弁護士が遺言書を偽造したというのは、一般のお客様にとっては誰を信用していいか解らなくなるような、本当に残念な事件ですね。今日は、この事件を題材に、遺言の偽造についてお話ししますね。

弁護士が遺言書を偽造!?判決は…

この事件は、どのような内容であったのでしょうか?
詳細は明らかでありませんが、以下、産経新聞(2020.7.31)から引用します。

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●●弁護士は昨年12月~今年4月ごろ、それぞれ別の故人の親族から依頼を受け、故人が生前に残していたとされるワープロ書きの文書を基にするなどして遺言書を偽造した。依頼人はいずれも法定相続人ではなかったが、遺産を相続できるような内容にしていたという。
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どうも、相続人ではない依頼者からの要請によって、本来相続財産を受け取ることができない人が、相続財産を取得するような内容の遺言を偽造したようです。
詳細な事情が気になるところですが、「弁護士が」犯行に及んだという事実は非常に重く、我々法律業界も驚いた事件です。皆様も、もし相続の時に、「弁護士が」書類をでっちあげて、自分たちに有利なように交渉を進めようとしたらどう思いますか??

さて、そんな被告弁護士に対して神戸地方裁判所は、

「遺言書の社会的信用を大きく失墜させる悪質な犯行だ。被告は故人の遺志をかなえるために犯行に及んだと述べているが、法を犯すことに何ら正当性はなく、法律の専門家である弁護士として、主導的な役割を果たした」
などとして、犯行に及んだ弁護士に対して、懲役2年、執行猶予4年を言い渡しました。執行猶予付きですが有罪判決ということで、妥当な内容ではないかと思います。

遺言書の真贋が問題となった例

遺言書に法定相続人でない者の名前を記載し、遺産を受け取れるようにしようとした今回の事件ですが、そもそも、遺言書はそんなに簡単に偽造できるのでしょうか??一つ事例をご紹介します。

遺言書の真偽について争われた事件として有名な例として、一澤帆布工業㈱の事業承継に絡む事件があります。

<事件の内容>

先代の一澤信夫氏が亡くなり、社長であった三男の信三郎氏夫妻に対して会社の持株の3分の2を相続させる旨の自筆の遺言書が開封されたあと、銀行勤めをしていた長男信太郎氏から、別の遺言書(長男信太郎氏に持株の大半を相続させる内容)が提出されました。つまり、「遺言書が2通あった」のです。
遺言書に書かれた内容が重複するときは、後に書かれた遺言書が有効とされます。三男信三郎氏が長男の提出した遺言書の無効を訴えて訴訟となり、一審では長男信太郎氏が提出した後に書かれた方の遺言書を「偽物であるとする十分な証拠はない」として、三男信三郎氏の訴えは退けられたのです。

ところが、なんとこの事件は最高裁まで進み、結局は信太郎の提出した「遺言書は偽物」として三男信三郎氏が勝訴という結果になりました。
第一審では「筆跡鑑定」が行われ「本物」と判断されたのですが、「一澤」という文字に拘りがあったのに、漢字が「一沢」の認印が使用されているという不自然な点などから、逆転判決が下されたとされています。
このケースから言えるのは、以下の二点です。

◆自筆証書遺言は、偽造がされやすい

→公正証書で作る遺言は、証人が二名必要であったり、公証人の面前で行わなければならないため、偽造は困難です。一方で、自分の手書きで作成する遺言は、密室でいつでも作成が可能なため、「自分の有利になるよう強引に書かせる」「筆跡をまねて勝手に作成する」といったやり方が発生しがちです。

◆裁判所も、偽造か否かの判断が分かれることがある

→一澤帆布工業㈱の事件では、偽造か否かについて裁判所の判断が覆るということが起こりました。これは、「成功に偽造されたものを見極めるのは困難である」ということを意味します。よって、プロの偽造屋さん(実在するそうです)に頼まれた場合、それが本物として扱われてしまう可能性があるということに留意しましょう。

どうすれば防げるのか?

では、遺言の偽造を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
…。
残念ながら、遺言の偽造を完全に防ぐことは不可能です。
なぜなら遺言は、「いつでも」「なんどでも」「方式を問わず」「遺言者の意思だけで」書き換えが可能であるからです。例えば、今日公正証書で作成した遺言を、明日自筆証書で変更や取り消しをすることも可能です。ですから、「遺言という対策だけで対応する」限り、偽造のリスクからは逃れられません。
そこで、家族信託を活用するという方法があります!
家族信託には、本人の財産を家族に残す、遺言書と同じ機能があり、遺言代用型家族信託とも呼ばれています。つまり、「信託した財産が誰に帰属(≒相続)されるか」ということを決めておけるのです。

この家族信託では、遺言に比べて法的安定性に優れていることが最大のメリットです。
「法的安定性に優れている」というのはどういうことかと言いますと、遺言というのは『単独行為』と呼ばれるように遺言者1人が行うことのできるものです。そのため、一度遺言書を書いてもらったとしても、その後勝手に内容が変えられてしまったという事態も十分にあり得ます。しかし、家族信託では、委託者と受託者による『契約行為』であるため、原則として1人で勝手に内容を変更することはできません。また、仮に信託契約を結んだ後に別の内容の遺言書が書かれたとしても、家族信託した財産には、遺言の効力が及ばないので安心なのです。すなわち、「家族信託契約は、二名の当事者による合意事項なので、一人では変更することができない。だから、遺言のような書き換えや偽造の問題とは無縁である」ということです!

まとめ

  • より確実に財産の承継について想いを残したい。
  • できれば生前対策もしたい

そんな方は、家族信託の活用、または遺言と家族信託の併用がおすすめです。お悩みでしたらすぐにご相談ください。思わぬリスクや突然の不利益が降りかかる前に、円満な財産承継を実現しましょう。
司法書士リーガル・パートナーでは、どんな些細な疑問も誠実真摯にお答えしており、これまで年間100件以上のご相談を承っています。もしあなたがお悩みであれば、お気軽に無料の相談を活用してくださいね。対面でも、オンラインでもご相談は可能です。

プロフィール

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士。22歳で司法書士試験に合格し、都内司法書士事務所で経験を積んだのちに独立。法律、税金だけでなく不動産活用や保険など専門知識を横断的に活用した相続対策の提案が専門分野。企業からのご依頼や自主開催のセミナー講師も多数登壇。

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