上場株式も家族信託で管理できる?

堀内貴敬

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士 22歳で司法書士の資格を取得し、15年に渡り不動産や相続問題、相続対策のコンサルティングを行ってきた。相続対策について、法律だけでなく税務や不動産、保険などの視点も含めた総合的なアドバイスが専門分野。

ご存知でしょうか?上場株式を保有している人の判断能力が低下したら、仮に暴落の危機が明らかに迫っていたとしても、株式の売却ができなくなってしまうかもしれないことを。

そのようなことにならないように、預金や不動産だけでなく、上場株式も『家族信託』で管理するという方法があります。そう、家族信託をしておけば、ご家族が本人の代わりに上場株式や投資信託を管理できるようになるのです。

上場株式を保有している人が認知症になってしまったら

繰り返しになってしまいますが、認知症などにより判断能力が低下した場合、不動産のほかにも株式などの金融資産の売却も管理もできなくなってしまいます。

そうなってしまった場合、「成年後見制度」の利用がまず思い浮かぶかもしれません。成年後見制度の多くの場合(令和元年司法統計によれば約78%)では、弁護士や司法書士などの親族でない専門職の後見人が就き、本人の生活費のために財産の管理権を行使しますが、原則は「現状維持」とい方針となります。すなわち、「合理的な理由」がなければ、生活費以外の本人の資産は動かさないということです。

また、成年後見人となる可能性のある弁護士や司法書士等の専門職は、株式や投資信託等の運用のプロではありませんので、自身の判断の誤りによって利用者(成年被後見人)の財産を棄損させるわけにはいきません。よって、「介護費用が必要だ」「施設への一時金を捻出する必要がある」といった理由がない限りは何もしない(=凍結される)という選択となることが容易に想定できます。

以上のとおりですから、上場株式を持っている方が認知症になってしまうと、後見制度を使わなくても、使っても売却などが出来ない可能性が生じてしまうということになります。

成年後見以外に対策はない?

判断能力が低下してしまった後に、財産を大きく動かす(本人確認・意思確認を伴うような管理や処分)のであれば、「成年後見しか選択肢がない」ということになります。よって、裁判所を経由して、時間をかけて進めていく必要がありますし、それ相応のコスト(お金や時間、ストレス)を覚悟する必要があります

それでは、事前の対策は何があるでしょうか?
以下に代表的なものをご紹介しますね。

①「代理届」を活用する

多くの証券会社は、本人に変わって家族などが受発注を行うことが出来るようにする、「代理届」という仕組みを利用できます。これは、「一定期間であれば」家族が代理できるという内容であることがほとんどです。これを利用すれば、「一定期間は(概ね1年程度)」本人の関与がなくても受発注が可能となるかもしれません。しかし、期間を過ぎれば再度本人・意思確認を行う必要があるため、万全な対策とは言い難いでしょう。

②家族信託を活用する

証券会社の対応にもよりますが、上場株式や投資信託も家族信託の対象財産として、受託者が管理することができるようになってきました。よって、家族信託を活用して上場株式をお持ちの方の判断能力喪失への対策をすることが可能と言えます。

もともと株式等を持っている方と、その方から託されて運用や処分をする方が公正証書で契約し、株式等を預かる人の信託口口座に移管します。そうすることで、もともと持っている人に判断能力の喪失等があっても、預かっている人の判断ですぐに売却等を行うことができます。それも、裁判所の関与なしにです。

上場株式を家族信託で管理するメリットは?

さて、ここまで上場株式をお持ちの方の判断能力喪失に備えて、家族信託が活用できるということをお話してきましたが、あえて家族信託で株式を管理するメリットは何なのでしょうか?

それは、

「裁判所の関与を受けずに、家族だけで家族の資産管理が可能になる」

という点であると言えます。
成年後見は、裁判所を通した公的な枠組みでありますので、どうしても保守的、硬直的な運用になりがちです。
もちろん、それがよいというケースもたくさんあるとは思いますが、一方で裁判所の関与を受けずに自由に家族の財産を管理していきたいというお気持ちには合致しません。
また、本稿では触れておりませんが、成年後見人に専門職が就職すると金銭的な負担が発生します(月3万円~)。
そうした煩わしく、過度に保守的な制度に縛られることなく、家族で迅速かつ柔軟に意思決定し、財産を活用できる点が家族信託の最大のメリットです。

まとめ

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
上場株式で資産運用をされている方も多いと思いますが、運用していらっしゃる方が判断能力を喪失した場合のことをお考えになられていることは非常にまれではないかと思います。
是非、判断能力喪失時のリスクを知っていただき、今後にお役立てください!

それではまた次回もよろしくお願いします!

プロフィール

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士。22歳で司法書士試験に合格し、都内司法書士事務所で経験を積んだのちに独立。法律、税金だけでなく不動産活用や保険など専門知識を横断的に活用した相続対策の提案が専門分野。企業からのご依頼や自主開催のセミナー講師も多数登壇。

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