遺言書ってホントに必要?

堀内貴敬

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士 22歳で司法書士の資格を取得し、15年に渡り不動産や相続問題、相続対策のコンサルティングを行ってきた。相続対策について、法律だけでなく税務や不動産、保険などの視点も含めた総合的なアドバイスが専門分野。

ご高齢者の方の相続対策として、一番認知されているものとして遺言書があります。ところで遺言書を何のために書くのか?そう、改めて聞かれたとしたら、あなたはどのように答えますか??
何のために書くのかが整理できていると、ご自身の想いをちゃんと実現できる遺言を書くことができたり、お父様・お母様とのお話もスムーズに進みますので、今回は「遺言書の効果」をまとめて解説しますね。

遺言は相続対策に有効なの?

私たちは、遺言は相続対策に非常に有効であると考えています!
なぜなら、遺言がない相続の場合は、相続人全員で「誰が何をどれくらい相続するか」を決める「遺産分割協議」を行う必要がありますが、この遺産分割協議、時に感情的・経済的な対立が先鋭化し、お互いに譲らず合意に至らないということがあるからです。皆様のご家庭ではいかがですか?もしかしたらすでに「うちは少しもめそう…」なんて思ってらっしゃる方もいるのではないでしょうか。遺言を書いておけば、「遺産分割協議が不要となる」ので、上記のような話し合いがまとまらないというリスクはゼロにすることができるのです。
よって、遺言は相続対策、その中でも特に「争続(あらそうぞく)」への対策には非常に効果を発揮します。本人の希望がかなえられ、受け取る側も話し合いが不要であるので負担は最小限で済むというのが、遺言の利点です。

遺言書の効果って?

もう少し掘り下げて、遺言の効果をお話ししますね。
遺言には、大枠で以下のような効果があります。

①争続の予防

先ほどのお話と重複しますが、遺産分割協議で紛争が予想される場合には、遺言書作成の必要性が非常に高くなります。

例えば、相続人同士が疎遠であったり、連絡のとれない間柄である場合を想像してみてください。

また、相続財産の大半が不動産である場合も紛争となりやすい傾向があります。不動産はそのままでは分割することができないので、誰が相続をするのか協議が長期化したり、場合によっては不動産を売却して金銭を分ける必要があり、長期化しやすいです。遺産分割協議が長期化すると、その間に相続人の中の誰かに相続が発生したりして、解決困難な事案となりやすいのです。

他にも、相続人の中に認知症などで判断能力が低下している人がいる場合は、そのままでは遺産分割協議を成立させることができずに、成年後見を申し立てる必要が出てくるといったデメリットもあります。
そのようなケースでは遺言書が効果を発揮します。

遺言書が作成されていれば、遺産分割協議をしなくても遺産は遺言書通りに相続されます。また、不動産を売却してその対価を一定の割合で相続させるという内容の遺言なども作成できますので、想定できるご家庭の課題に対して、柔軟な対策を行うことが可能です。

今までの経験から申し上げると、「平等でない!」と相続人のどなたかが思うような内容の相続をしたいのであれば、絶対に作成すべきです。なぜなら、「平等である」というのは受け取る側の主観であり、コントロールが不可能だからです。コントロールが不可能なので、親の意思を明確にし、無用な議論(争い)が起きないようにしておきたいものですね。

②確実に移転

2つ目の効果は、事例で見てみましょう。
〈事例〉
Aには、妻Bがいますが、二人の間には子供がいません。Aの財産は3,400万円のABが住んでいる自宅不動産と現金が500万円あります。
Aの両親はともに亡くなっていますが、Aには兄Cと弟Dがいます。

この事例においてAが妻のために遺言を作成するメリットはあるでしょうか?
〈解説〉
本事例において、Bよりも先にAが亡くなった場合、法定相続人はB、C、Dとなります。
Bが不動産を相続して、自宅に住み続ける場合、Bの法定相続分を超える財産を取得することになり、CやDから代償金の支払いを求められる可能性があります。
Bは代償金を捻出するために不動産を売却することになったり、現金の相続ができずに今後の生活費に困窮する事態が懸念されます。
そこで、Aが生前に「不動産を含む一切の財産をBに相続させる」という遺言書を作成しておくことで、兄弟姉妹には遺留分がないことから全部の財産をBが相続することができるので、有効な対策となります。

上記の事例は、「妻が確実に遺産を受け取れるようにしたい」という想いを実現させるための遺言でした。転じて、誰かに確実に渡したいときは、遺言は必須であるということが言えるのではないでしょうか。
絶対に渡したい人・ものがあるときは、遺言を作成しましょうね。

③本人の意思の実現

最後は少し抽象的なふわっとしたお話ですが…。
遺言のメリットの一つとして、「自分の想い通りに相続させる」ということが挙げられます。皆様は、ご自分のことはご自分で決めていらっしゃいますよね?
例えば、今日何を着る?ランチは何を食べる?週末はどこに出かける?など、人生は意思決定の連続です。そして、「自分のこと、自分のものは自分で決める」というのはすべてに通じる大原則ではないでしょうか。
「相続があった後は、自分はいないから関係ない」という考え方ではなく、ご家族のために、「自分の財産のいきさきは、自分が決める!」という最後の意思決定をすることができるのも、遺言のメリットです。

遺言書の注意点は?

そんな遺言ですが作成の際には最低限以下の点を押さえておきましょう。
基本を押さえるだけで、よくある失敗は回避できます。

①遺言能力

有効な遺言をするには、『遺言能力』と言って、「判断能力」を有している必要があります。(民法961)
つまり、当然のことですが、自分で遺言の内容を理解することができる程度の判断意思能力は必要ということです。
なので、認知症等により判断能力が低下してしまうと、遺言が書けなくなってしまうので注意が必要です。遺言が無効になってしまったというケースも実は数多く発生しています。

②遺留分侵害

法定相続人のうち、配偶者や子、親等は遺留分と言って、相続財産の一部を一定の割合確保できる権利を有しています。
この遺留分を無視した遺言を作成しても、遺留分権を持っている相続人から遺留分の回復を請求されることがあり、遺留分をめぐって親族間で深刻な争いを誘発する恐れがあります。
遺留分とは、言い換えれば「絶対にもらえる相続分」という表現もできますので、これを大きく減少させるような遺言を作成する場合は、相応の理由が必要ですし、しっかりと伝えておく必要があります。もちろん、ある相続人に全部を相続させ、ほかの者は一切渡さないという遺言も当然に有効ですが、争いを助長するリスクを意識しておきたいところです。

③認知症等への対策ではない

遺言を作成しても、判断能力を喪失してしまった場合(認知症や病気など)には、別のコラムでもご紹介した「財産凍結」のリスクが残ります。
よって、遺言だけを作成しても、ご相続全体を見据えた良い生前対策であるかどうかはわかりません。ですから、「遺言だけ作ればすべてOK!」という考えではなく、「自分の課題を解決するためには、どのような手段を組み合わせるべきなのか?」を考えて対策をしていきましょう!も

まとめ

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
皆様もなじみがある遺言ですが、知っているようで知らないことも
多いですよね。ネットの情報は玉石混合ですので、
是非信頼のできる相談相手を確保しておきましょう!

それでは、また次回よろしくお願いします。

プロフィール

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士。22歳で司法書士試験に合格し、都内司法書士事務所で経験を積んだのちに独立。法律、税金だけでなく不動産活用や保険など専門知識を横断的に活用した相続対策の提案が専門分野。企業からのご依頼や自主開催のセミナー講師も多数登壇。

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