5分で読める家族信託入門

堀内貴敬

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士 22歳で司法書士の資格を取得し、15年に渡り不動産や相続問題、相続対策のコンサルティングを行ってきた。相続対策について、法律だけでなく税務や不動産、保険などの視点も含めた総合的なアドバイスが専門分野。

家族信託とは

前回までのコラムで、「財産凍結」の問題とそれに対する対策である「家族信託」についてごくごく簡単にお話をさせていただきました。まだまだ消化不良の方も多いのではないかと思いますので、今日は家族信託について今一度解りやすくお話しますね。

家族信託とは、一言で言えば、

「高齢者の方(親世代を想定)の財産を家族で管理処分できるようにする仕組み」

のことです。

ご両親が70歳、80歳と高齢になっていくにつれて、どんなご家庭でも対策が必要になってきています。

高齢になればなるほど、あまり考えたくはないことですが、ご両親の介護施設入居が必要になったり、判断能力が低下したりする可能性は高くなりますよね。
例えば、認知症や事故などで自分の意思を示せなくなることもあります。
それだけでも、本人にとってもご家族にとっても、辛い状況だと思います。

そこで、『自分の財産の管理を、家族の誰かに託す』家族信託をあらかじめ設計しておくことで、次のようなメリットがあるのです。

メリット①本人の判断能力が低下しても、財産の管理・処分が家族だけで行うことができる

例えば認知症等により、本人の判断能力が低下してしまうと、お金を預けている銀行が預金の引き出しに応じてくれなくなってしまったり、お持ちの不動産を売却しようとしても不動産会社や司法書士が取引を進めてくれないような状況になってしまいます。そのような状態を「財産の凍結」と呼びます。
そうすると、自宅等の売却ができず、介護費用などの捻出ができなかったりと困ってしまうケースがあります。
そんな時でも、家族信託契約をしておけば、本人の財産を預かった家族が代わりに預金を引き出したり、不動産を売却したりできるので、本人の体調・判断能力に左右されない財産の管理・処分が実現でき安心です。
※その他にもメリットや使いみちがありますが、またの機会にお話しますね!

メリット②成年後見制度に比べ、柔軟な財産管理が実行できる

判断能力が低下してしまう前に家族信託をしておけば、成年後見制度のデメリットを受けることがありません。成年後見制度のデメリットに関しては、後ほど詳しくご説明いたしますね。

メリット③管理による負担から解放される

「財産はもう息子に任せてる」と仰る方は多いものですが、それは法律上は任せていることになっておらず、金融機関や契約の相手方など外部との手続きが発生すると、結局は本人でないと進めていけないということも多いのです。
例えばマンションの管理の為に業者と契約を結ぼうとしたり、修繕・建て替えの為に金融機関と契約を結ぼうとしても、判断能力が低下していて、法律上有効に契約することができないなどの支障が出てきますが、家族信託でこれも防げます。

もう一つの制度「成年後見制度」とは

判断能力の低下などで「預金の引き出しができない!」「不動産の賃貸・売買ができない!」という問題が起きてしまった場合の制度として、家族信託の他にももう一つ「成年後見制度」が用意されています。

成年後見制度とは、家庭裁判所が「成年後見人」を選任し、意思を示せなくなった人を保護する制度です。
この成年後見人には、多くの場合専門職と呼ばれる弁護士や司法書士、社会福祉士が選任されます(令和元年の統計によると家族以外が就任する可能性は約78%です)。

成年後見人が居れば、必要な資金を銀行から引き出したり、場合によっては不動産を売却したりすことができます。本人が亡くなるまで見守っていてくれるので、ご家族にとっては安心できる制度ですね。

しかし、そんな成年後見制度には次のような若干使いづらい一面があります。

①後見人への高額な報酬
②財産の使い道が自由にならない
③途中ではやめられない

後見人への報酬は、月に2~6万程度かかります。また、「本人の保護」が目的なので自宅の売却や賃貸も無条件にはできません。親族への贈与などもってのほかです。成年後見制度の判断基準は、「本人にとって合理性のある判断か」という点にありますので、「家族にとっていいこと(生前贈与による相続税の節税など)」が、必ずしも許容されないとことに難点があります。
そうとは知らずに成年後見を開始して、途中で「それなら止めたい」と思っても、制度上、よほど特別な場合でなければ途中で成年後見を止めることはできません。

そのようなデメリット回避し、
『もっと家族で手軽に柔軟にできる財産管理の方法ってないの? 』
という期待に応えるのが、家族信託なのです。

家族信託と遺言書

高齢になってくると高まるリスクのもう一つが「本人が亡くなる」ことです。
この場合は、自宅も預貯金も一旦「相続財産」となり、残されたご家族(相続人)の間で「だれが何を」引き継ぐのか話し合いがまとまらない限り、先ほどの例のように財産を動かせなくなります。そうならないために遺言を残そうと検討している方も多いと思います。

ところが、生前対策を考える場合には、遺言書だけでは不十分といわざるを得ない場合も多く見られます。

遺言書には以下のような問題点があるのをご存知でしょうか。

遺言書の問題点

①生前の期間をカバーしていない
②いつでも書き換えが可能

遺言書は、本人が亡くなった時にのみ効果が出ます。ですので当然のことながら生前の期間に判断能力を失ってしまった場合の対策にはなり得ない為、「遺言書を書いたから対策は万全だ!」というわけにはいきません。

それから、せっかく家族で話し合って財産の配分案を決めても、本人が遺言書を書いたことを忘れてしまって、ひそかに新しく遺言書を作成すると、内容が抵触する部分は新しい遺言書が優先されるため、いつでも変更できてしまいます。時として、「推定相続それぞれが、自分に有利な遺言を書かせる」という、「遺言書かせ合い合戦」のような状況になってしまうご家庭もございます。

一方、家族信託なら、『遺言代用型信託』といって遺言のような使い方もできて、認知症等に対する生前の財産管理対策にもなりつつ、財産の承継先まで決めて置ける一石二鳥の面があります。つまり家族信託を活用すれば

  • 自分が元気なうちに財産を家族に任せておける(認知症対策になる)
  • 任された家族が、本人のために柔軟に財産を管理することができる
  • 次世代以降の財産の承継先も指定できる

などのメリットがありますし、遺言ではないので本人が一人で自由に書き換えは出来ません。

その他にも、不動産の共有問題回避や、共有不動産の塩漬け予防ができたり、親亡きあとの障害がある子供の財産管理のために家族信託を使ったり、経営者が後継者に会社経営を引き継ぐために使ったりと、使い方は色々ですが、それらはすこしづつお話していきますね!

まとめ

まとめると、成年後見制度や遺言書制度などの既存の枠組みでは「叶わなかった」部分が、家族信託によって実現できるようになるのです。例えば、生前の認知症対策や遺言書の書き換えの防止などです。
まだ歴史の浅い家族信託ですが、テレビや雑誌でも取り上げられたりと、これからますます需要が高くなっていきますので、皆さんもアンテナを張ってみてください。

いくつになっても、安心して暮らしていけるように、すこしづつ考えていきたいものですね。
それでは、今回はここまでです!

最後までご覧いただきありがとうございました。

プロフィール

司法書士リーガル・パートナー代表司法書士。22歳で司法書士試験に合格し、都内司法書士事務所で経験を積んだのちに独立。法律、税金だけでなく不動産活用や保険など専門知識を横断的に活用した相続対策の提案が専門分野。企業からのご依頼や自主開催のセミナー講師も多数登壇。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP