何が役立つかわからない!

石井 紀子
U.A.E.の国営企業ADNOC LNGに転職、東京連絡事務所で液化天然ガス製造販売に係る業務を担当。外資系企業での勤務経験は約38年。現在は「いくつになっても英語は武器」をモットーに「実務で役立つ英語」を広げるための英語講師となる。

何が役立つかわからない!

転職7,8年目のことでした。本社からイギリス人CEO夫妻(夫人を帯同するのは初めてのことでした)が来日することになり、本来なら責任者が成田空港まで出迎えるところ、前日にテニスで足の靱帯損傷(泣)となり、急遽私がお迎えすることになりました。面識は既にあったので難なく出会い、車にご案内。

夫人は日本が初めてのこともあり、車中「あそこに見えるのは何か?あの字は何と書いてあるのか?どういう意味か?」などと色々と聞いてきます。東京都に入って間もなく荒川を渡っている時、「この川の名前は何か、その意味は?」と聞かれ、「Ara-kawaと言って意味はRough River」とお答えしました。でもそれ以上のご案内は、悲しいかな出来ず。最低でも、どこを流れて東京湾に注ぎ、日本で最大級の川だと説明できていたら…と今でも心残りです。「荒」を“Rough”と訳すだけでは能がないじゃないですか。「サイモンとガーファンクルの”明日に架ける橋 (Bridge Over Troubled Water)“にもあるようなTroubled River」と、もうちょっと捻った解説が出来たら、もっと夫人と話が弾んだのではないかと思うのです。

滞在中夫人にアテンドする間色々とお話しできて、その結果、ナント!仕事抜きでU.A.E.にご招待ということに。(何が役立つかわからない!) CEOの豪邸のパーティーに招かれ、美しいプールが室内にあるのにとてもビックリ!もう30年近く前のこと、その豪華さにカルチャーショックでした~!

余談ですが、当時U.A.E.の入国審査はNorth America, Europe, South East Asiaというふうに地域別で、Asiaというのが無い!実は日本はFar Eastだったのです。そういえばFENってFar East Network。「中東から見れば日本って東のも~っと先の小さな国なんだ~」と不思議な感傷に浸った覚えが。入国するのは圧倒的にフィリピン人が多く、全員メイドとしての出稼ぎ労働者でした。Are you Philippine ? と実際間違われ、すごいショック!

これ以降CEO夫妻ご案内は、フランス人、アラブ人と2組続くことに。特にアラブ人ご夫妻の希望で箱根にご案内した時は、私自身何度も行ったなじみの地だったこともあり、時間的ロスもなく十分に楽しんでいただけました。(思わぬところで経験が生かされる!)

 

スケジュールが決まれば終わったも同然

全ての手配を日本サイドでするという仮定でお話します。

来日の予定が入ってきます。到着・出発予定、便名、宿泊希望ホテル、来日目的。これらが最低必要情報となり、これを基にスケジュールを組んでいくのです。

来日者、受け入れ側双方が共通認識を持つため、行程表(Itinerary)を作ることをお勧めします。私はエクセルで表にし、追加や変更の度にメール添付して確認していました。

たいてい来日の連絡は急に入るので、大急ぎで手分けをしてやることに。一番にするのはホテルの予約。ホテルの希望(ホテル名・部屋のタイプ・禁煙か喫煙か)の確認をして予約することで、滞在中の車手配が出来るわけです。

We have booked a king bed room (no smoking) at The Palace Hotel Tokyo for you for 5 nights

from DD/MM/YYYY as requested.

並行して会議や顧客訪問には、然るべき相手のアポを表に入れていきます。アポの時間は移動時間を考慮に入れること。

例えばItineraryには

15:00  Meeting with ABC Company  (Venue: Tokyo Office)
Attendees:  Mr. Suzuki, CEO
Mr. Tanaka, GM
Mr. Yamamoto, MM

この様に書き込み、Eメールに添付して送ります。どこが追加されたかを明確に。

The meeting with ABC Company has been fixed at 15:00 on DD/MM. The venue is our Tokyo

Office. The attendees from ABC Company will be Mr. Suzuki, CEO, Mr. Tanaka, GM and Mr.

Yamamoto, MM.

An updated itinerary is attached for your reference.

主なスケジュールが出来上がり、最後に車の手配(transportation)となります。ここまで出来上がれば終わったも同然。あとは来日を待つのみです。

とは言っても、「車の手配は大丈夫?時間を間違えていなかったかしら?」などと、毎回ドキドキものでした~。真夜中にハイヤー会社に念押ししたことも何度か...(汗)

空港で出迎える

要人は空港まで出迎えに行きましたが、その他の来日者にはハイヤーやタクシーを差し向けていました。

We have arranged for a car to pick you up at Narita Airport.  XYZ Hire driver will meet you at

the exit just after the customs clearance, holding your name on the board.

We are looking forward to seeing you very soon.

本人には上記のEメールを送っておき、英語OKの運転手を手配しておけばまず間違いなし。当日は、便が定刻の到着であるか確認するのを忘れずに。

ホテルにお迎え

滞在中、ホテルの迎えの時間はItineraryにしっかり記入すること。

08:50  Pick up in the lobby

前日には次のように迎えの時間を口頭で確認しておくのも忘れずに。

I will be waiting for you in the lobby at 8:50 tomorrow morning.

ハイヤーの車番や運転手の携帯番号も確認しておいて、ロビーで待ち合わせます。

スケジュール通りの行動をとってくれればいいのですが、僅かな隙間時間があると予定外のリクエストをしてくる場合もあり、例えば買い物など。そんな時は臨機応変に“寄り道“となります。(あくまでスケジュールに影響ないように。) こんな時、日頃美味しいお店を食べ歩いたり、買い物したりしている経験がものを言うのです。「これを買いたいので連れて行って」「あれを食べたいので連れて行って」が即座に思いつくわけです。(無駄じゃなかった!)

一日の行程が終了してホテルに無事送り届けるまでが、アテンドの仕事です。(お疲れ様)

世の中そう思い通りにはいかない

スケジュール通りに運ばないことは何度も。そんなエピソードをちょっとご紹介しましょう。

エピソード1:  ある雪の降る日でした。東京での会議も無事終わり、便も定刻の出発。こちらもホッとして退社しようとしていたところ、ホテルを出発したはずのイギリス人からの電話。リムジンバスに乗ったのはいいけれど、途中バスが坂を登り切れず運転打ち切りになってしまって困っていると。携帯電話のない時代です。「どこから電話してるの?」と聞くと、「バスがえんこした向かいの知らない事務所で電話を借りているけど、英語が通じなくて困っている。ここがどこだかわからないけど、出発便に間に合うように車を手配して欲しい」と相当焦った声。それからがタイヘン。手分けして空港会社に便の出発を遅らせるよう交渉したり(もちろん断られましたが)、電話を借りている場所を聞き、すぐにハイヤーを手配して...結果的に出発便にはギリギリ間に合いました!おかげで、彼が成田空港に着くのを見届けるまで、1時間余り残業となってしまいました~(泣)もちろん着いたかどうかはハイヤー会社経由で確認。本人はそれどころじゃなかったと思いますよ。

その雪の日というのは、都内が大雪になり、首都高が閉鎖され多くの車が立ち往生した時です。皆さんの中にはまだ幼児だった方もいらっしゃるのでは?(笑)

エピソード2:  U.A.E.で女性の起用が推進され、女性社員数名が日本の大手商社のトレーニング・プログラムを受けに来ることになった時のこと。そのうちの1名をトレーニング初日、商社員がホテルに迎えに行き、念のためチェックインを確認したところ…チェックインしていないことが発覚。すぐに私に電話があり「彼女は今どこ?!」。本社がオープンするのは日本時間の正午なので、きっかり正午に電話をかけ(メールの返事を待ってる場合ではない!)事情を話したところ、”I saw her this morning.”という返事。しばらくして本人からメールが届きましたが、来日しなかったのは、”family reason”だそうで、二の句が継げませんでした...。これはアラブ人だから、ってこともあるけれど。

エピソード3:  会議で数名が来た時のこと。会議当日の朝、一行のリーダーがギックリ腰になり、リーダー抜きで会議は無事終わったものの、東京の責任者自らが整形外科に連れて行ったり、食事の差し入れをしたりと大変な騒ぎとなってしまいました。無事成田を出発出来たのは幸いでした~(結局会議には出ず東京に来ただけ...)

“めげない心(Grit)“を持つことも実務英語では欠かせない!と感じることしきり。

次回は訪問先へのアテンド、通訳、食事接待、宗教的な儀礼等々の話です。話題提供にはいつも苦労しました...

〈プロフィール〉

大学で英米文学を専攻。卒業後電子部品メーカーに入社、米国からの輸入業務を約5年経験。
その間、日米会話学院、ISSインスティテュートで英会話を学ぶ。
U.A.E.の国営企業ADNOC LNGに転職、東京連絡事務所で液化天然ガス製造販売に係る業務をコーディネーターとして約38年勤務。
退職後は英語講師として幅広い年齢層を指導している。
ライフワークとしてアラビア語学習中。

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